佐伯綾

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半年前に戻れたらいいのに ただ優太が好きで、いつも優太と一緒にいた頃。 優太と山部たちと、くだらないことで大笑いして 部活やって、生徒会の仕事もして、忙しいけど充実してた。 行きたい大学を見つけて未来にときめいていた。 いろんなことおしゃべりして、ふと見上げれば私を見つめる優しい顔。 優太の隣、すごく居心地が良くて幸せだった。 今は苦しい。 好きだから、一緒にいることが苦しい。 こんな日が来るなんて思わなかった。 12月に入ったころ、もう別れようと思った。 相良さんとはあれから何もなかった。 けれど、もう優太と一緒には居られないと思った。 でも、今日はやめとこう… 借りてた本を返してから… 雨が止んだら… なかなか言い出せなかった。 意を決して、優太と一緒に帰ることにした。 「クリスマスどうしようか?」 そう聞かれて、去年のことを思い出した。 優太の家で山部たちも一緒にみんなでゲームした。 恋人ムードは一切なかったけど楽しかったな。 そうか…もうすぐクリスマスなんだ。 「クリスマスは一緒に過ごせない。」 そう答えると、優太の顔が少し曇って寂しそうになった。 「そっか、なんか用事あるの?」 言わなくちゃ…。 「他に好きな人ができた」 優太の顔が… すごく辛そうで見ていられなかった。 でも、私だってずっと辛かったこと優太にわかって欲しかった。 「今も優太のこと好きだよ。だけど…。もっと私を好きになって欲しかった。私ばっかり好きで苦しかった。」 穏やかでいつも優しかった優太が 一瞬怖いくらい怒った表情になった。 嫌われたって思った。 それなのに次の瞬間 「ーーー苦しめてたなら、ごめん。 でも、オレは… 綾といられて楽しかったよ。」 泣き出しそうな目で一生懸命笑顔作って。 最後まで、何でそんなに優しいの…? そうだよね… 私達、楽しかったよね? 初めて人を好きになって 初めてキスして 私達、幸せだったよね? だから、悲しい別れにしたくなかった。 「私の方こそ、勝手でごめんね。…最後に握手しよ。」 そう言って手を出した。 握手して、手を離してそれでおしまい。
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