佐伯綾

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相良さんと映画を見たあとホテルに来た。 どんな場所かは知ってた。 その頃の私は投げやりで、無鉄砲で、でも変化を求めていた。早く大人になって、今の自分を壊したかった。親の都合に振り回される自分。大好きな人を振り回してしまう自分。 優太と別れたことを絶対に後悔したくなかった。 別れて正解だったと、新しい道が開けたんだと思いたかった。 「シャワーは後でいっかー」 相良さんがそう言って私にキスをした。 ゆっくりベッドに倒されて… ーーー。 覆いかぶさられたら急に怖くなった。 「そんなカチコチになんないでよ。」 と笑われた。 そう言われても怖くて動けない。 すると相良さんがはっとした表情で言った。 「もしかしてイケメン彼氏としてなかったの?」 優太との事。 この状況で一番言われたくないことだった。 何も言わずにいると相良さんは上体を起こし、ベッドの上で正座するような格好になってため息をついた。そしてめんどくさそうに頭をかいた。 すると怖い気持ちより、意地でも今日して欲しいという気持ちが強くなった。億劫がられて悔しかったのもある。 今日終えてしまいたい。ここを出る時、違う自分になっていたい。 「しないんですか?」 「だってさぁ………。」 横たわる私をじっと見下ろした。 「男の人はみんなしたいものなんじゃないんですか?」 「…うん。基本的にはそうだね。」 じゃあどうして…。 また、真依子の話を思い出した。 彼氏に頼み込まれて初エッチしてから毎回会う度にするようになったと言っていた。嫌だと言ってもやりたがると。 それなのに私はまたこんな状況。思わず呟いた。 「誰も私としたくないのかな。」 「そんな事ないと思うよ。店長ならお金払ってでもしたいだろうね。」 ゾッとした。あからさまに嫌悪した私を見て相良さんが笑った。 「いいよ。じゃあ、綾ちゃんの初めての男になってあげる。」
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