佐伯綾

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相良さんとはバイトを辞めたら会うことはなかった。 それでいいと思った。 会いたいとは思わないけど、あの人がその後どんな人生を歩んでいるのかは気になるかも…。 そんな不思議な魅力のある人だった。 オーストラリアから帰国してもやっぱり地元には戻れなくて東京の英会話教室で働くことにした。 大卒じゃなくても英語力さえあれば認められるし、やりがいもある。 相良さんに言われた通り、「人生後からどーにでもなるよ。」だった。 恋愛は…。 どうにもならないことばかり。 「綾ってほんと、長続きしないよねぇ。」 真依子にいつも言われていることだった。 真依子は東京のデザイン学校を卒業しショップ店員を経てその後、独立。 アパレル会社を立ち上げて女社長になっていた。 独創的な経営戦略で成功していた。 「綾にはやっぱ、アイツしかいないんじゃない? 高校の時の…。何とかっていう名前のー。」 「……優太?」 「そうそれ!なんとか優太!」 真依子結局名前全く覚える気なかったね。 優太のことはいつも心のどこかにあった。 お互い幼くて不器用だったけど、一生懸命恋してた。 あの日の選択を後悔していない。 優太を好きになったことも 優太に別れを告げたことも あの恋があったから、今の私があるって言えるから。
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