佐伯綾

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地元に戻ってきたら、そういうこともあるかもしれないとは思った。 でもマナの新しい幼稚園で山部と再会するとは思っていなかった。 家から近いっていう、それだけの理由で選んだ幼稚園だったから。 「えー、主任の山部です。転入の手続きですね。」 と書類を置いて顔を上げたときの山部の顔。 笑ったなー。 ただ、それからすぐに複雑な顔をして言った。 「実はこの園、優太の子供もいるんだよね。」 久しぶりに聞いた名前。 優太…結婚したんだ。 もうお父さんになってるんだ。 「子供には関係ないことだから、綾が気にならないならいいと思うけど…。」 「うん…気にならない。というか、マナの送り迎えは母に頼むつもりでいるから、他の園では厳しいんだ。行事以外は私は幼稚園へも来ないし。」 私が細かな事情を説明すると山部は納得したようだった。 「まぁ学年は違うし、運動会も終わってて、学年を跨いだ親の参加イベントは夕涼み会だけだから。じゃあ転入の手続き進めとくな。」 「はい!よろしくお願いします。」 山部に深々頭を下げた。
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