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嘘ついた。 ゆうちゃんと、綾ちゃんが再会したこと。 知っても平気なふりして 「大丈夫よ。」って 嘘ついた。 本当は大丈夫じゃない。 あれからずっと心の中がぐちゃぐちゃ。 次の日の朝 洸太を幼稚園へ送ったときに、山部くんに声をかけられた。 「岩瀬さん、体調…よくなったの?夕涼み会の日、体調崩して帰ったって聞いたけど…」 心配そうに私の顔を覗き込む山部くん。 「そうなの。実は熱が出ちゃって…。夏風邪だと思うんだけど、でも今はすっかり元気!後で会長さんに謝らなくちゃ。」 「そっか、ならよかった…………。」 そう言い終えてもまだ何か言いたそうな山部くん。 「「………。」」 お互い無言になってしまった。 「「あの」」 そして同時に喋り出してしまってさらに気まずくなった。 「もしかして佐伯さんのこと?山部くんがおととい言おうとしたこと」 私が言った。 それを聞いて山部くんが 「やっぱり夕涼み会の時鉢合わせちゃった?」 と訊いてきた。 「ううん。昨日ゆ…前田くんがショッピングモールで会ったみたい。」 私は努めて明るく言った。 「…。みたい?」 「私はその場にいたわけじゃなくて後から聞いたの。たまたま会ったって。洸太も佐伯さんのお子さんのこと知ってたって。」 「そっか…。岩瀬さん、大丈夫?やっぱ元カノなんていい気はしないでしょ?」 「ううん!私は大丈夫だよ!かなり昔のことだし、それに前田くんの元カノなんて気にしてたらキリないよ!」 そう言って笑ってみせた。 「まあ…。そうだな。」 山部くんが私を見て言った。 「俺がいうのも何だけど、優太はホント岩瀬さんに惚れきってるから、心配いらないからね!」 「ふふ、なんか照れちゃうな、ありがとうね。」 そう言って山部くんと別れた。 ゆうちゃんにも 山部くんにも 「私は大丈夫」って 嘘…。 嫉妬に汚れた私の心、誰にも見せられないもの。
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