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「ほら見て洸太、これ、星の形してるよ!」 ゆうちゃんが今度はオクラを指差して言った。 「あー!ホントだー!星の形!」 「どんな味かな?食べてごらん?」 ゆうちゃんが言うと洸太が目を輝かせた。 「きっと星の味だよー!」 子供の発想ってホント可愛くて喋るのを聞いているだけで顔が綻ぶ。 それにゆうちゃん、洸太が喜ぶポイントよくわかってるなぁ。 「…っあれ!…あれ?」 オクラが滑って洸太は上手く掴めない。 「っ!気づかなかった、こうちゃんにはまだ難しかったかも…。」 そう言ってスプーンを取りに行こうと立ち上がりかけた時、ゆうちゃんに手で制止された。 見ると、洸太が震えるお箸でなんとかオクラを1つ摘んでゆっくりと口へ…。 夫婦で固唾を飲んで見守った。 やっと口へ入ると2人してため息をついてしまった。 「うーん、星の…味かなぁ。」 洸太はなんとも複雑な表情で言った。 どうやら苦手みたいね。 それでも頑張って食べてえらいえらい。 ゆうちゃんも嬉しそうに洸太を撫でていた。 なんとかオクラを飲み込んだ洸太が思い出したように喋り出した。 「今日ねマナちゃん星の飾りのゴムつけてたよー。」 マナちゃんと聞いて、穏やかだった食卓の雰囲気が、ぎこちなくなった。 「そうなんだね。女の子は星とかハートとか好きだもんね。」 私がいうと 「ママも好き?」 「うん好きだよ!」 「何色が好き?」 「黄色かなあ」 「なんで黄色が好きなの?」 これまた永遠に終わらなくなりそう。洸太の質問攻撃…。 「洸太、先にご飯食べようか。」 ゆうちゃんが言ってくれた。 「うん!」 再び食べ始めてから間を置かずまた洸太がしゃべりだした。 「あのね、マナちゃんちはママとねおばあちゃんとねマナちゃんの3人でね、パパはいないんだって!」 「え…?」 それを聞いたゆうちゃんは少し動揺したように見えた。 私は琴子さんから聞いていたけど、ゆうちゃんは綾ちゃんがなぜ帰ってきたのかは知らなかったんだ。 「いろんなお家があるからね…。さぁ、洸太食べよう。」 洸太にそう言って自分も食事を再開したゆうちゃん。 綾ちゃんのこと 気にしていないふりをするゆうちゃんと私 本当は気にしているのに。 お互いに、相手のために偽ってる。 今まで当たり前にあった 私の幸せな時間が 少しずつ歪んでる。 たった1人のひとのために。
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