片想い、そして悠久

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<和輝side> ――――そう思ってたのに。 「智琉!お願いよ智琉、しっかりして!」 「智琉くん……!」 あれから一週間もたたないうちに、智琉の身体は毒に犯されてしまった。 あっという間だった。 俺も毎日見舞いに来てたけど、智琉の身体がどんどん細くなっていって、話せる時間も短くなって、何度も「今にも消えちゃいそう」って思った。 俺が心配そうな顔をするたびに智琉は「大丈夫」だって言ってたけど、最近となってはそれも信じられなかった。 智琉の言葉が信じられないんじゃなくて、大丈夫な見た目じゃないことは一目瞭然だったから。 「か、あさ……」 「智琉!智琉!」 「おれ……ごほっ……くっ」 「無理して喋らなくていいから!気をしっかり持って!」 俺が心配していたことは現実になって、少し経たないうちに先生から一言、「お覚悟はしておいて下さい」って言われた。 まさか智琉が本当に消えちゃうなんて。 まさか智琉と離れ離れになっちゃうなんて。 永遠に会えなくなっちゃうなんて。 寂しくて辛くて、言葉が出てこなかった。 その時が来たんだって思っても、それを受け入れることはなかなか出来なかった。 「か、さ……きいて……」 「……なぁに?智琉」 「いままで……ありがと……」 「……そんなこと言わないで。また家族で一緒に笑える日が来るわ」 「…………」 ベッドの中の智琉は、ただただ小さい。 身体も細いから一回り小さく見えるし、声だって小さい。 俺と同い年で、俺と背もほとんど一緒で、並んで歩いたときに見上げることも見下げることもなかったのに。 今の智琉は俺よりも年下みたいに見える。 加えて声もほとんど出ていないから、今目の前で急に消えてしまっても本当におかしくないくらい。 そんな智琉を見ていると、目の前に本物の智琉がいるのに、本物の智琉じゃないみたいだ。 智琉のかぶり物をした人形か、もしくは智琉にそっくりな別人でも見てるみたい。 智琉の母さんが言ってた通りあまり無理はして欲しくないのに、まだ全部伝えきれていないのか、智琉の口は再び開かれる。 「かずき……」 「……なんだ?」 「だい、すき……」 「……っ!俺もだよぉ!」 無理して欲しくないのに……。 今だけでも自分のことを一番に考えて欲しいのに……。 最後の最後まで、智琉は俺のことを考えてくれるんだ。 そういうヤツだよな。 知ってるよ。 知らないはずないじゃんか。 智琉のそういうところが好きなんだから。 ずっと俺と一緒にいなくても良かったのに、嫌な顔せずずっと俺と一緒にいてくれて、ずっと俺のことを見てくれてた。 そんな智琉が、俺だって好きで好きで仕方ないんだから。 「智琉、好きだよ。大好きだ」 「……うん」 「ずっとずっと大好きだよ、智琉」 「……おれも、だよ」 智琉への好きって気持ちは止まらなくて、止められるはずなくて、 周りに母さんたちがいることとか、ここが病院だとか、そんなこと頭になかった。 ただ、ただ智琉が好き。 その気持ちでいっぱいで。 「智琉……っ」 「かずき……」 「智琉とずっと一緒にいたい……!離れ離れは、嫌だ……!」 「ごめんね……かずき……」 「智琉のせいじゃ、ないじゃん……」 俺は時間が許す限り智琉の傍にいて、智琉に好きだと言い続けた。 智琉の手を握って、智琉の頬に触れて、智琉が今ちゃんと俺の目の前にいるんだって自分に自覚させるみたいに。 何度も何度も好きだと伝えた。 これで最後だって思いたくないけど、これで最後にしたくないけど、でも後悔もしたくないから。 沢山好きだと伝えても、それでもやめなかった。 呆れたのか何なのか分かんないけど、俺たちの交際に反対していた母さんたちは、この時だけは何も言わなかった。
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