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<智琉side>
もうちょっとぐらい、生きれると思ってたんだけどな……。
「智琉!お願いよ智琉、しっかりして!」
「智琉くん……!」
和輝のことを泣かせてしまったあの日から、早数日。
俺の身体には、完全に毒が回ってしまったようだった。
俺が言うのもなんだけど、あっという間だった。
毎日見舞いに来てくれる和輝に、毎日のように心配されて。
「大丈夫か?」って聞かれる度に「大丈夫だよ」って答えてたけど、きっと和輝には大丈夫じゃないってバレてるんだろうな……。
だって俺の見た目、お世辞にも大丈夫って言える見た目じゃなかったし。
「か、あさ……」
「智琉!智琉!」
「おれ……ごほっ……くっ」
「無理して喋らなくていいから!気をしっかり持って!」
先生からはただ一言、「そろそろだ」って言われた。
気を遣って遠まわしな表現をしてくれたけど、そろそろ死ぬって言ってくれても良かったのに。
こんな身体じゃもう、長く生きれないことくらい分かってるんだから。
でも、まさか自分が死ぬなんて思ってなかった。
……そんなこと考えながら生きてる人なんていないか。
まさか和輝と本当に離れ離れになってしまうなんて。
永遠に会えなくなっちゃうなんて。
現実を受け入れるしかないんだけどね。
もうどれだけ足搔いたって、頑張ったって、俺の身体は治りそうにない。
「か、さ……きいて……」
「……なぁに?智琉」
「いままで……ありがと……」
「……そんなこと言わないで。また家族で一緒に笑える日が来るわ」
「…………」
まずは母さんに、ありがとうを。
父さんに伝えられないのは残念だけど、心の中で沢山伝えてるからね。
父さんも、沢山ありがとう。
母さんの、「まだ生きてて欲しい」って気持ちも分からなくないけど、今の俺にはちょっと厳しいみたい。
「かずき……」
「……なんだ?」
「だい、すき……」
「……っ!俺もだよ……!」
そして和輝には、大好きを。
ずっとずっと大好きだった。
和輝だけが好きだった。
離れたくなんてないし、ずっと和輝の隣で、和輝の笑顔を見ていたかった。
和輝の幸せを、和輝の隣で願っていたかった。
和輝が幸せだって思ってるだけで、俺だって幸せなんだから。
和輝が笑ってくれるだけで、俺も笑えたんだから。
「智琉、好きだよ。大好きだ」
「……うん」
「ずっとずっと大好きだよ、智琉」
「……おれも、だよ」
和輝への好きって気持ちは止まらなくて、止められるはずなくて、
周りに母さんたちがいることとか、ここが病院だとか、そんなこと考える余裕なんてなかった。
ただ、ただ和輝が好き。
その気持ちだけでいっぱいで。
「智琉…っ」
「かずき……」
「智琉とずっと一緒にいたい……!離れ離れは、嫌だ……!」
「ごめんね……かずき……」
「智琉のせいじゃ、ないじゃん……」
和輝は、時間が許す限り俺の隣にいて、俺に好きだと言ってくれた。
俺の手を握って、俺の頬に触れて、飽きないのかってくらい撫で続けてくれた。
そして何度も何度も好きだと伝えてくれた。
俺だってこれが最後だって思いたくないけど、これで最後にしたくないけど、でも後悔もしたくなかったから。
俺もできる限り和輝に大好きを伝えた。
どれだけ言葉にしても伝え切れる気がしなくて、声が出ないから伝えようにも上手く伝えられなかったかもしれないけど。
でもきっと、和輝なら俺の気持ちを理解してくれたはず。
あまりにも俺たちが好きだと言い続けるものだから、呆れたのか何なのか分かんないけど、俺たちの交際に反対していた母さんたちも、この時だけは何も言わなかった。
(最後にちゃんと伝える時間をくれてありがとう、母さん……)
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