片想い、そして悠久

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<和輝side> 病院で亡くなった人の死体は、その人の家か葬儀場に運ばれるらしい。 智琉の母さんたちがどういった決断をするのかは分からなかったから、智琉に会えるのは、とりあえず智琉が病院にいる間だけだった。 智琉と顔をあわせられるのもあと数分ぐらいになった時、ようやく智琉の母さんがベッド脇から立ち上がった。 そろそろ帰ろう、そういう意味みたいだ。 「先生、今までありがとうございました」 「とんでもないことです。最後までお力になれず申し訳ございません」 「智琉はちゃんと頑張ってましたもの。きっとこれが智琉の運命なんですわ」 「……私が言えたことではありませんが、どうか笑顔で送ってあげて下さい」 いつの間にか部屋の外に来ていた橋本先生に各々がお礼を言いながら、智琉の部屋を後にしていく。 俺も部屋を出るべきなんだけど、これで智琉の顔を見れるのも最後なんだと思うと、なかなか動けなかった。 身体も視線も、智琉に釘付けだ。 「君は、いつも智琉くんの見舞いに来てくれていたね」 「……はい」 「智琉くんから唯一の幼馴染だと聞いている。やる事は沢山あるから、あと五分だけね」 「……ありがとうございます」 まさか俺のことを智琉が話していたとは思ってなくて、先生に認知されていることには驚いたけど、今はそれが有難かった。 もう少しだけ俺に時間をくれた先生に感謝しなくちゃ。 これでもう少しだけ、智琉の傍にいられる。 「智琉、離れ離れは嫌だよな……」 ―――――― 「俺もやだよ。智琉と永遠に一緒にいたい」 ―――――― 「だからさ、」 今度こそ何の反応も返さない智琉の屍に、俺は独白みたいに語り掛けた。 そして周りに誰の気配もないことを確認してから、そっと智琉のお腹あたりの上にまたがる。 ちょっと重たいかもしれないけど、ごめんね。 俺が智琉と一緒でありたいから、ちょっとだけごめんね。 すぐにどくから。 ズボンのポケットの中でスマホが震えたような気がしたけど、それは無視した。 だって俺の唯一の望みは、智琉と一緒にいることなんだから。 「だからさ、俺のことも一緒に連れてってよ、智琉」 そう言って、俺はズボンのポケットの中から小瓶を取り出して迷わず蓋を開け、中に入っている物体を一気に流し込んだ。 中に入っているのは、致死量を超えてるであろう量の液体。 大学の研究室から、硫酸をちょーっと拝借してきたんだよね。 致死量超えるならちょーっとじゃないでしょ、ってツッコミは無しね? 立派に窃盗なんだけど、まぁ死ぬんだしいっかって思ってあまり気にしなかった。 薬品の瓶なんて、他にもたくさんあったし。 「ん……」 一思いに口に入れると、なんとなく舌が痺れたような気がした。 うぇ、薬品なだけあってやっぱり美味しくはない……。 硫酸を飲んだら意識が混濁して、吐血したりするらしいけど、そしたら俺も智琉のところに行けるかな……。 もう一度、智琉に会えるかな……。 俺の望みはずっと、智琉の傍にいることだけなんだから。 智琉に会うためだったら何だってできるよ。 「………さ…と、る……………」 ずっと智琉と一緒にいたいよ。 智琉と一緒にいられるなら、場所なんてどこだって構わないんだから。 ☆――――――――☆――――――――☆ 公開が遅くなってしまいまして申し訳ございません。 あと2ページで完結いたしますので今しばらくお付き合い頂けましたら幸いでございます。 2022/09/15     春夏冬
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