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きんいろ。
◇
夜七時前。夕暮れ時。黄昏時。
世界が金色に包まれる瞬間を目を細めて見ていた。
海に行こう、と言い出したのは誰だったかな。
普段はそんなに活発でないから通知をオンにしてあるクラスのグループトークが一昨日の真夜中、にわかに騒がしくなった。
通知音が消える前に次の通知が重なる。
スマホが壊れたのかと慌てて起き上がって開いてみたら、夜中に突然メッセージを送ってきたことへの文句で溢れかえっていた。
埋もれた本題を探し当てる間にもみんなからのお怒りメッセージが入ってくる。
『海に行こうぜ』
夏休み課題を教えあった内容から飛んで五日、日付が変わって二時間が経つころ、唐突に送られてきていた一言。
漁夫の利よろしく自分は発言しないくせにこっそり回答を写させてもらった日からもう五日も経っていることに驚いた。
すごい勢いで流れていくメッセージのなかに、言い出しっぺの男の子のアイコンを見つける。
『明後日、海に行って花火しようぜ』
文字ばかりの流れに埋もれないように、花火のスタンプをいくつも連ねていた。
『急だな!』
『用事あるし』
『夕方? 遅くなるなら場所による』
『BBQは!?』
さっきまで文句しか出てこなかったのに、一斉に食いつくせいでまた通知の波が立つ。
しょぼしょぼする目を擦りながら、ついついと指先でメッセージを流していく。
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