きんいろ。

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行く、行かない、行ける、行けない。 そんな文字の羅列をぼうっと眺めていると、真っ青な背景に黒字の『月』が浮かぶアイコンを見つけた。 『行く』 感嘆符も絵文字もないシンプルな二文字。 江川くんがこういうノリに付き合うのは珍しい。 基本的に静かなグループだけど、たまに突飛な提案をする人がいる。 たとえば夏休み初日にはいきなり『明日レジャープールに集合!』なんて招集がかかっていた。 わたしは行かなかったけど、集まりは結構良かったらしい。 誰がまだ返事をしていないかを名指しで送ってきた子がいて、朝に返すつもりだったのに『行く』と打ち込んで送信していた。 二桁の既読がすぐについたかと思うと、他の潜っていた子も各々の返信を送ってくる。 グループの通知を一旦切ってスマホを伏せたところで、なぜかピコンと通知が入る。 切ったはずなのに、とスマホを持ち直すと、友人から個人チャットへメッセージが届いていた。 『江川が来るの珍しいね。良かったじゃん』 にしし、と笑う女の子のスタンプがその友人にそっくり。画面の向こうできっと同じ顔をしている。 チッと舌打ちをするひよこのスタンプを送り返す。 スマホの明るさで吹き飛んだはずの眠気はすぐそこに待機していたようで、返信を待つ間もなく眠ってしまっていた。
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