きんいろ。

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江川くんは眩しい。 見た目がもう眩しい。 くすみがかった金髪は陽に透けると白っぽい。 きっと何度もブリーチを重ねているはずなのに、傷みの少ない髪は江川くんの真っ白な肌と相まって、その透明感には目を見張るものがある。 教室では窓側に座る江川くんを、斜め後ろの席から眺めるのが好きだった。 もっとも、江川くんは真面目に授業を受けることが日の半分もあればいい方という、ちょっと困った人だから、そこは空席であることが多いのだけど。 こめかみの刈り上げなんかはいつまでも見ていられる。 ソーダ味のアイスを食べきる頃には下の方が溶け始めていて、持ち手に伝ってくる。 手の側面に流れた水色の液体をぺろっと舐めとる。 「……あ」 舌を覗かせた瞬間、江川くんと双眸がこっちを向いた。 べ、と舌を出したまま動けなくなると、掬うはずの雫が砂浜に落ちた。 「扇情的」 「はっ? え、なに」 「男子高校生には少々刺激が強い感じ?」 江川くんの薄いくちびるから赤い舌が覗く。 白いものと比べるとどうしようもなく、色のついたものが映える。 それが濃い色であれば尚更、鮮烈に瞼に焼き付いて離れない。 魅入っていると、江川くんは口元を手で覆った。 焦らすように手が離れると、現れたくちびるは真一文字に結ばれていた。
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