1 夕暮れ

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 男の言葉に一瞬ぽかんとした宗助だが、もう一度あたりを見回して、ああ、自分がもうそろそろ寿命が尽きるのだった、と思い出した。  「となると、ここは天国なのかい」  「違う。ここは境目さ」 「まだ天国じゃないなら、もうしばらく待ってくれないか。最後に、太輔に会いたい」 「会えれば納得するか」  男が微かに顎をあげる。宗助の後ろを見ているようだ。つられて、宗助は振り返った。  振り返った先のまだほんのり明るいそらと白い砂浜の境目に、ぼんやりと白い半透明のスクリーンが、何かの旗のように揺れていた。そこに、1人の若い男が浮かび上がった。  「弟というのは、あれか」  「……ああ、そうだ。太輔だ」  「似てないな」  「大きなお世話だ」  太輔は椅子に座っているように見える。上半身は、車か電車の窓から外を見ているかのようだ。恐らく、新幹線か何かでこちらへ向かっているのだろう。  
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