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男の言葉に一瞬ぽかんとした宗助だが、もう一度あたりを見回して、ああ、自分がもうそろそろ寿命が尽きるのだった、と思い出した。
「となると、ここは天国なのかい」
「違う。ここは境目さ」
「まだ天国じゃないなら、もうしばらく待ってくれないか。最後に、太輔に会いたい」
「会えれば納得するか」
男が微かに顎をあげる。宗助の後ろを見ているようだ。つられて、宗助は振り返った。
振り返った先のまだほんのり明るいそらと白い砂浜の境目に、ぼんやりと白い半透明のスクリーンが、何かの旗のように揺れていた。そこに、1人の若い男が浮かび上がった。
「弟というのは、あれか」
「……ああ、そうだ。太輔だ」
「似てないな」
「大きなお世話だ」
太輔は椅子に座っているように見える。上半身は、車か電車の窓から外を見ているかのようだ。恐らく、新幹線か何かでこちらへ向かっているのだろう。
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