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「理由は違えど俺もそうやって歩んできたんだ、自分の第二の人生を」
いつまでも、おんぶに抱っこは嫌だよな。俺も昔嫌だったんだ。
「プハー! オレハコノタメニイキテルンダー!」
セリアのバイトの帰りに寄ったラーメン屋で、セリアは頼んだラーメンを瞬時に平らげスープを一気に飲み干した。
「セリア。それ、ビールじゃないから」
「タイショー! ナマチュー!」
「あいよー!」
「あの店長、すみません、キャンセルで」
「冗談ですよ。いつもありがとうございます」
これ以上ここに居ては危険だ。俺は自分のぶんを片付けると、速やかに会計を済ませ店を出た。
「今日はどんなだった?」
俺は後ろのセリアに聞いた。
「ベーター2、2トン5カイダンアゲ1」
これは引越し屋の業界用語だ。ベーターはエレベーターありの集合住宅の案件、2トンは2トントラック一台ぶん、5階段上げは5階まで階段で荷物を運び上げる案件。
何度も仕事させてくれた会社だから、だんだん板についたんだろう。
「結構ハードだったんだな」
「セリアクタクタ」
帰宅後汗だくになったセリアの衣服を文字通り引き剥がし、洗濯機へと放り込んだ。
カラフルな五厘刈りやモヒカン刈りの社員さんたちは第一印象こそ厳しかったが、案外良識を持った人たちだった。
「接客態度も悪くないし仕事も真面目にこなしてくれるが、お客さんも俺たちも目のやり場に困るから次からブラジャーを付けさせてくれ」
初仕事の日に迎えに行ったら俺が言われた。俺は後日、ランジェリーショップでセリアにスポーツインナーを上下買わせた。
しかし日雇いには文化の違う外国人も、先天的後天的に不幸のあった大変な人も少なからず居るのには、向こうも慣れているんだろうな。
よくある話と、向こうは笑って言っていた。
若い頃、俺は今よりさらに視野が狭かった。勉強すれば手に入る頭の良さすら手に入れないのは甘えだと、本気でそう思っていた。
だが現実は、教養すらも運だった。まず五体満足に生まれたことは、突き詰めれば運でしかない。
日本みたいな先進国の平和な時代に生まれたことも、いうなればそうだ。世が世なら、八つ裂きにされて死ぬまで槍を持って敵兵に突っ込む人生だったかもしれない。
それに、教養には金がかかる。学力は自分ひとりで身につけられない。親が稼いでくれなければ、教師がいい仕事をしてくれなければそんなものは身につかない。
「常識が、常識として身についていることは幸運だ」
この世の全てを知り尽くした気でいた若い自分は、日々生活費のためバイトをハシゴし初めてそれを実感した。
「金がこの世の全てじゃないが、この世の全てに金が要る」
なんかの漫画で見たセリフだが、この言葉こそ資本主義社会の真理だろう。
「セリア、また汗疹できてる」
女の象徴が豊かに実るとこんな弊害が伴うもんだと、こいつと出会って初めて知った。
風呂から上がりその左右の実りをセリアに自分で持ち上げさせてその裏側に消毒液を塗布していると、未知なる世界の膨大さを俺は実感させられた。
世の中は、知り尽くすには広すぎる。
「ハジメ、スゴイゲンキ」
「仕方ないだろ」
ボクサーパンツが卑猥な形に盛り上がる。世の男たちが目のやり場に困ってしまう、気をつけなければ目を奪われる魔性の果実を直接見ながら弄ってたんだ。
「いきなりかよ」
「シカタナイダロ」
ボクサーパンツがセリアの手によりずり下ろされた。つい先ほどまで医学的に手で処置していた感触が、俺の怒張を直接包んだ。刺激よりも情報が、俺の興奮を加速させた。
「どこで覚えたんだよ」
「ハジメノオカズ」
余計なモノから余計なコトを覚えやがって。俺はセリアがケガせぬように、後頭部を手で抱えながらそっと体重をかけて馬乗りになった。
俺は後ろに手を伸ばし、負けじとセリアを弄ってやった。
「濡らしてんのかよ」
「シカタナイダロ」
俺だってもう限界だ。ゴムを手に取り手早く被せ、セリアの中へと挿れこんだ。
「ハジメ、ケダモノ」
「仕方ないだろ」
仕方ないだろ。同室で暮らしているんだから。
仕方ないだろ。さっきまで風呂に入っていたんだから。
仕方ないだろ。ゴムを買い置きしてたんだから。
仕方ないだろ。もう一度二度じゃないんだから。
仕方ないだろ。俺も健全な男だから。
仕方ないだろ。おまえの女体はそれほどまでに魅力的だ。
俺はそんな自己正当化を塗り重ねながらゴムのなかに吐き出した。
「マタアセダク」
「ガスがもったいないから水シャワーな」
「金とシゲンとイノチノモトノムダヅカイ」
ほう、なかなか言葉を覚えたじゃないか。狙い通りに腹立たしいぞ。
俺たちは再びかいた汗をシャワーで流し、汗で再び不衛生となった乳房の裏に消毒液を塗りなおした。
乱高下した血圧と、出し尽くした疲労感が眠気を誘った。俺は同じく瞼を無力に垂れ下がらせた、セリアとともに床へと就いた。
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