ナイスバディな面倒事に出くわした

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「イッテラッシャイ」 「行ってきます」  仕事を終えて、無事帰宅。一週間三交代は週明けの地獄を乗り越えさえすれば、二日目以降はそうでもない。 「オカエリナサイ」  扉を開けると、Tシャツ姿のセリアが出迎えた。 「ただいま。いい子だからご褒美だ」 「ゴホービ?」 「ああ、給料だ。いい子にするのがおまえの仕事、これはセリアの初任給だ」  ん? 手になにか持ってるな。まぁいいや。 「俺は、給料が欲しいから仕事してんだ」  人の役に立てば、人を喜ばせれば報酬をもらえる。資本主義の大原則を、これで理解してもらえるといいな。 「タベテイイ?」 「食べていい。向こうでな」  俺は作業着を脱いで洗濯機に放り込み、セリアを部屋へと促した。 「どうだ?」 「オイシイ」  スプーンで次々口に放りこみ、あっという間に食べ尽くした。だがなぜか、浮かない顔をしている。 「ハジメ、セリアワカラナイ」  何がだ。 「どうした?」 「ハジメ、オトコ?」 「男だよ」  セリアがさっきから手に持ってたモノを見せた。本棚から見つけたであろう夜のDVDだった。 「オトコ、セックス、スキ」 「セリア、オンナ」  突然だな。いや、そんな素振りは見せていた。言語化できるようになっただけか。 「ハジメ、ヤサシイ、セリア」 「オトコ、ヤサシイ、セックス」  セリアが胸元に抱きついてきた。欲望と打算だけで組み立てられたロジックだな。 「ハジメ、オトコ。セリア、オンナ」 「セリア、ゴホービ、セックス」  セリアの両眼がまた妖しく光る。この光は、俺を操る。 「ハジメ、セリア、セックス」  俺は力ずくで首を横に振った。目を閉じて催眠を解いた。 「ハジメ、セリアキライ? セリア、オンナ」  セリアの目にまた涙が浮かぶ。こいつ、よく泣くよな。 「違うよ、好きだ」  俺はセリアの唇を奪った。俺は俺で、嫌だった。  道端で困り果てている女の子ひとり救えない、情けない男になりたくなかった。 「だが、催眠はやめてくれ」  俺は親指でセリアの瞼を下ろし、目の光がもとに戻ってから頷いた。 「俺に、俺の意思でお前を愛させろ」 「ハジメ?」  ……。こっちは、相当勇気を振り絞ったんだぞ。 「好きだ。セックスさせろ」  俺はベッドにセリアを押し倒し、シャツの下から手を入れた。 「揉ませろよ」  直接胸を揉みしだくと、セリアは今までに見せたこともないような、嬉し恥ずかしそうな顔をしていた。  今の今まで、ないがしろにして悪かった。求める俺を受け入れてくれ。  俺の素人童貞卒業のパートナーは、道端で拾ったナイスバディな面倒事だった。  ―― 序章:ナイスバディな面倒事に出くわした the end ――
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