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告白
「ちょっと考えさせて……」それが返答であった。
ひとまず、君原の提案通り久保を呼び出した。人気の無いところというと、やはり体育館の裏しか思い浮かばなかった。昔のラブコメ漫画かって一人で突っ込んだ。
呼び出しの手筈は君原が手配してくれた。
一通り授業が終了したあと、俺は財布と鍵だけをポケットに入れると約束の場所へと向かった。なんだか緊張する。少し早めに行って、落ち着いてから話をしようと思う。
体育館に到着、あの角を曲がると約束した場所。俺は少し浅めの深呼吸をした。
「あれ?」そこには久保恵の姿があった。彼女は顔を赤く染めている。しかし、約束の時間まで、まだ少し時間が有るはずだった。
「どうして?こんなに早く……」先を越されてしまった。
「だって、霞原君が私に話しがあるって聞いたから……、早く聞きたくて……」上目遣いで俺の顔を少し下から見上げる。長い黒髪が風にたなびいて輝いている。本当に可愛い子だと改めて思う。
「そうなんだ……」なんだか恥ずかしくて彼女から目を逸らしてしまった。
「ところで、話しって何?」なんだか催促されてるように感じる。
「ああ……、えーと、実はさぁ」
「ええ!」
「俺……、君の事が」
「ええ!」
「可愛いなって思ってさ……」
「ええ!」
「あの……、俺と……」
「ええ!」
「付き合ってくれないかな?」
「ええ!」
「え!?」あれ……。なんだこの展開は……。
「嬉しい!私もずっと前から霞原君の事が好きだったの!」彼女は、俺の身体に抱きついてきた。
「ちょっ、ちょっと待って!」俺は彼女の身体を引き離した。
「どうしたの?」不思議そうな顔をする。
「えーと……」
「なに?」
「ちょっと考えさせて……」俺は自然とその言葉を口にした。
「えっ!?」気まずい沈黙の時間の始まりだった。
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