ケーキカット

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ケーキカット

 今の、地を這うみたいな声、誰の声だ……?  まさか、俊……?  そんなわけないよな……!?  恐る恐る顔だけ振り返ると、俊はベッドにゆらりと膝立ちになり、顔を上げる所だった。  その顔が……獣化寸前で唇の端は裂けかけてるし、琥珀色の瞳の中の黒い瞳孔がギューッと小さくなってて……顔は綺麗な俊のままなのに、完全にホラー映画の悪役みたいな顔になっている。 「ひぃ……っ!」  反射的にベッドから逃げだそうとした俺を、俊の腕と、覆い被さる厚い胸板が阻止する。 「逃げたら……噛み殺して、骨まで……全部食ってやる……」  ……しゅ、俊……っ!  あの不器用な感じの敬語どこいった!? いや、今心配するべきはその問題じゃないか!  尻尾を握られたまま背中から体重をかけられて、もう完全に動けない……捕まった獲物だ。  俊は俺の自由を奪ったまま、鋭くとがった歯で首の後ろにかじりついてきた。 「うぁ……っ!」  殺される……!!  と、思ったけど、ギリギリの甘噛みで、俺は死ななかった。  でも、後ろでハァハァ激しい呼吸が聞こえて、ものすごく葛藤しながら寸前で我慢してるのが分かる。 「俺のもの……もう全部……俺のうさぎ……」  ……朦朧とした呟きの内容は、まるきり獲物を独り占めして貪ろうとする狼の頭の中だ。  血中にアドレナリンが溢れて心臓が爆発しそうに高鳴り、視界がグラグラした。  いつ皮膚を食い破られてもおかしくない。  なのに、触られてもいない俺のちんぽは、生存本能なのかガチガチに勃起したまま、あやうくイキかけていた。  ああ、これ知ってる。  一度ハマったことがあるから、身体が覚えている。  食われる寸前の、脳内麻薬ドバドバの多幸感だ……っ。  俊の尖った歯が俺の薄くて長い耳をがじがじ噛んでしゃぶり始めて、いやらしい音で頭の中がいっぱいになる。  俺の身体の何かがぶっ壊れてるのか、ちんぽの先からダラダラと汁がこぼれて止まらない。 「俊っ……、ここも……っ、ここも、噛んで……」  頸動脈が噛まれやすいように、わざと首を傾けて横を向く。  誘惑に負けた狼が、吠えながら肩に激しく噛み付いてきた。  太い牙が、薄い皮膚一枚を突き破る寸前まで食い込んで、ゾクゾクッと背筋に強い快感が走る。  痛くて怖くて涙が出るのに、意識が甘く痺れて、もうどうしようもなく気持ちいい。 「あぁぁ……っ、いきそっ、う……っ♡ 止まらな……っ」  びくびく跳ねているガチガチのちんぽの先を、後ろから肉感のある大きな手でぎゅっと握られた。 「あ! ァ……♡」  その、固い肉球を感じる手の中に、びゅっびゅっと勢いよく精を吐き出す。  ああ、俺、ほとんど触られていないのに。  異常に興奮したせいで……。  もっと最後の一滴まで出せとばかり乱暴に扱かれて、ぐちゅぐちゅ艶めかしい音が立った。 「だめ、ぁっ、はあぁっ……♡」  びく、びくと吐ききって、ぐったりと俺がうつ伏せに倒れると、俺の背中に覆い被さっていた俊がやっと離れてゆく。  一瞬、しんと部屋の空気が静まりかえった。  ようやく頭が冷えてきて、ハッと我に返る。  今、俺……何、された……?  さーっと血の気が引き始めたあたりで、ビチャビチャという水音が絶え間なく聞こえてくるのに気づいた。  まさか……俊……?  ガバリと起き上がり、ベッドの上で彼に向き直ると、相手はもう完全に人間な姿を捨て、巨大な狼に変身していた。  野生の美を凝縮したような逞しい四肢と、ランプの灯を反射する宝石のような瞳に、うっとりと視線を奪われる。  アイドルとしての俊にも時々透けて見える、他人の手で抑えつけ、ましてや操ることなんて出来ない、崇高な魂。  その鋭い視線と目が合った途端、狼は前脚を屈めてから跳躍し、俺という獲物の上にのしかかってきた。 「俊……っ!」  仰向に押し倒されながらその身体を受け止めると、骨格がしっかりしているせいか、犬に似た見た目から想像するより、かなり重い。  肉球のせいか衝撃はそこまで無いが、前足が肺を圧迫して、心臓が苦しいくらいだ。  黒く縁取られた大きな口が開いて、ざらりとした長い舌が俺の体中を舐め回し始めた。  もう今度こそだめだ……食われるかも。  そう思うとまた体中の皮膚が燃えるように火照った。  乳首に舌が当たり、そこから何かがジンジンと溢れ、イッたばかりの股間を直撃する。 「あう……っ、やめっ、ちんぽの奥に変なのが来るぅ……っ♡♡」  狼は俺の反応に気づき、食いちらかす前に獲物をもてあそんで楽しむように、ぴちゃぴちゃとそこばかり執拗に舐めてくる。  首の所の長く分厚い毛を掴んでもぎ離そうとすると、今度はわざと甘く牙を当てるみたいにガジガジされ始めて、ひいっと息が漏れた。 「ひっ、痛ぁ……♡ そこっ、歯ぁ、あたって……っ、くぅ……っ♡」  口では止めながら、ビンビンに勃った乳頭に舌や牙が当たるたんびに、俺の意志じゃどうにもならない快感が電流のように背骨を走って、腰の奥が砕けてトロトロになった。  ちんぽの方もあっという間に復活して、それを俊の腹毛に当てるのが気持ちよくて……。 「んぁっ、そこっ、食って……気持ちいぃ……っ♡」  腰を浮かせて浅ましく求めると、俊は俺のペニスが自分の腹に当たってるのに気づき、グルルっと唸りながら、身体を丸めた。  フーッ、フーッと狼が激しく匂いを嗅ぎながら、でっかい頭を俺の股の間に突っ込んでくる。 「ちょ、なに……ア、ひぃっ♡」  止める間もなく、俊の長い舌が、亀頭や皮にまとわりついた俺の精液を舐めとり始め、強い刺激に気絶しそうになった。 「うっ……ンっ……! 俊、それ汚……ダメだってぇ……っ、感じやすくなってるとこ……っ、アぅン……っ♡♡」  人間よりも長くて大きな舌が生み出す、ビッチャビッチャという湿った水音と、めくるめく快感に身悶える。 「アッ、やめ、そんなに舐めたらっ、声出ちゃっ、離しっ、んクぅ……ぅっ♡ 気持ちいい……っ、んあっ、皮の下んとこ、入ってこないで、こぇ出るぅ……♡」  内装は部屋っぽいけどここはあくまでテントで……少し離れた場所には他のテントもあるし、こんなあやしい声出しちゃダメなのにっ。  口を必死に押さえても、両手の指の間から、甘ったるい喘ぎ声がとめどなく漏れる。  いっそ諦めて、俊のベロが当たらないように指でちんぽを守ろうとするんだけど、鼻先で指の間をこじ開けられて、隙間からレロレロされて、かえってヌルヌル感と密着感が増すだけだった。 「それぇっ、また変なのキてるっ♡ もっ、いぐぅ……っ♡♡」  理性なんかもう、けし粒だ。  感じる場所を愛撫から守ってたはずの手は、本能のまま、いつのまにか、唾液にまみれたちんぽをじゅこじゅこと扱き始めてた。  ぱくぱくする鈴口から垂れ落ちる体液を、蜂蜜か何かみたいに俊が激しく舐めとって……。  ……涙出るくらい気持ち良すぎる、結婚して初めての共同作業。 「いく……っ、だめ、また……っ、俊、いぃ……っ♡ 俺のやらしいとこ、もっと食べて……っ」  震えながら2度目の精液をとぷとぷ吐き出すと、それも俊の舌がすぐにさらっていく。 「うン……っ♡ ンッ♡」  舐め回される先っぽが敏感になりすぎて、もう辛いのかイイのか分からない。  余韻でビクビク跳ねる腰を、狼の足が押さえ、白濁したタンパク質の塊を全部しつこく舐めきってゆく。  余韻で全身から力が抜け、ぐったりとしていると、狼はそわそわしながら、俺のフェロモンの出所、つまり尻の穴……に鼻筋を突っ込み、嗅ぎ出した。
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