恋花火

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 青い市松風の模様浴衣を七宝柄の濃紺地の帯で締め、小振りの帯掛けポーチを提げている。足下は太くて黒い鼻緒の下駄。  初めての浴衣姿にしてはなかなか粋で、様になっている。響哉は元々の男ぶりを二割増し上げている。 「ねえ、響哉」 「何」  私の浴衣姿は響哉の目にはどう映っているの? 「うん、ううん……。何でもない」 「変なヤツだな。行くか」 「うん」  新しい浴衣なのに。  嘘でも似合ってるとか何とか一言言って欲しい。  そんな口には出せないわだかまりを飲み込んだまま、私の溜息は夏の夜の蒸した熱気にかき消され、私達は並んで歩き出した。  私と響哉は幼馴染み。  家は離れているけれど母親同士が仲が良く、小さい頃は夏休みになると地元で一番大きな夏祭りに連れて行ってもらって、花火大会の打ち上げ花火を一緒に見た。  夜店のりんご飴を囓り、金魚すくいをして……。  夏休みで一番楽しい想い出。    それは、小学六年・十二歳の夏祭りのことだった。  夜空に打ち上がる花火を見ながら、響哉が言った。 『中学生になっても、大人になっても二人で一緒にこの花火を見に来よう』
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