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それは、スーッと星が尾を引きながら放射状に飛び散って、菊花の紋を描き出す。
ドーン……! ドーン……!!
牡丹、冠(かむろ)、万華鏡……球状に大きく飛び散る花火は特に華やかで目を奪う。
そうかと思うと、上空から柳の枝が垂れ下がるように光が落ちてきたり、パンパン!と大きな音を出しながら強い光と共に火の粉が舞う。
次から次へと赤や青、オレンジの大輪の花火がぱっと咲いては散って、夜空を飾る。
毎年、見ている光景だけど、その華やかさに目が釘付けになる。
「ねえ、響哉。綺麗だよね」
そう語りかけた私に
「果帆の方が綺麗だよ」
と、響哉は呟いた。
びっくりして隣で立ったまま空を見上げている響哉を見つめた。
その横顔は、あの十二の夏祭りの夜を彷彿とさせ、私は響哉の本気を見た。
響哉の黒髪がさらりと夜風に吹かれ、揺れた。
初めての浴衣姿の響哉は、改めて目を引いた。
私から目を逸らし、響哉は瞳を閉じる。
ざらりとした鈍い感覚の時間が流れる。
「俺……」
ああ。
言わないで……!
私は絶望的に確信めいた予感を感じていた。
響哉は……。
きっと……。
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