お礼

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お礼

俺達は、虎の金で取り付けたエアコンで涼んでいた。虎は、抱き合わせで買ったPC でネットを、八代は、5Gの新しいスマホをいじっている。 「マジ?!リュウさん!これ、ビビアンさんですよね!」 「あ?」 ネットニュースの画面には、ビビアンの花嫁姿が映し出されていた。 見出しには、インド人も、ビックリ!大富豪マハラジャの結婚式、お相手はフィリピン人女性。とあった。 黄金一色の式場には、祝儀の札が、幾つも、山を作っている。 確か、あれから、ビビアンは故郷のフィリピンへ帰るとかで、店をたたんで姿を消した。 「マジ、フィリピン人になってますよ!」 え!と、八代が、遅れて声を上げた。 「龍様!ビビアンがっ!」 と、スマホを翳している。 「お前も、見たか」 「なぜ、韓国じゃないんでしょう?」 「ビビアンは、韓流にはまってなかったからなぁ」 俺の言葉に、八代は肩を落とした。 「これは!」 八代が、俺にスマホを差し出した。 組員と、元組員が、ホテルのロビーで、撃たれた。犯人は、逮捕、云々とある。 「龍様、やはり、怪しい輩が、動いているのは、確か。八代、龍様の警護を強化させて頂きます」 撃たれた二人は、昔、俺とシマの張り合いをしていた。そして、大規模な抗争に繋がった。 その後、俺はカタギになった。それでも、昔の怨みつらみを、俺に向ける輩が居るのだろう。 「俺はいい、虎を守れ」 「ですが、龍様」 「八代、虎は、関係ねぇだろ?」 「うわっ、何、ホテル襲撃事件って?!」 虎は呑気に、画面に見いっている。 此処もいつ襲われるかわからねぇな。と、俺が、心配していると、 「片平、いるかっ!!」 男の大声と共に事務所の扉が、蹴破られた。 啖呵を切るのをためらう程、現れた男達の風貌は、カタギじゃないとわかるものだった。 「虎!逃げろ!」 「リュウさん、あんた……」 虎は言ったまま、立ち尽くしている。 「八代!虎を!」 「この間は、うちのもんが世話になったなあ」  先頭の男が、上着の内ポケットに手を入れた。 「たっぷり、礼はさせてもら……」 言い終わる前に、グハッと、声を上げると男は倒れ、持っていた銃が床に転がった。 黒い人影が、目にも留まらぬ早さで宙を飛び、男たちへ次々蹴りを入れていく。 俺も八代も、その様に圧巻された。 男達は、バタバタ倒れ、転がった銃は、蹴り飛ばされて、俺の足元へ集まっていた。 「龍様!」 八代の呼びかけに、俺は、慌てて銃を拾い上げる。 俺から、奪うように銃を抱えた八代は、部屋の隅にある金庫の中へ仕舞いこんだ。 なぜ、金庫なのか。乗り込んで来た男達の手に渡らないようにするには、丁度いいが。 「大事なものですから……」 そこか、八代。 「ああ、リュウさん、ダイジョブね!」 ……また、妙な奴らが現れやがった。
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