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本場の味
謎の男は、八代が自分の組の者と、倒れた刺客達を運び出すのを黙って見ていた。自分の部下だろう、ターバン姿の男三人を従えている。
「スミマセン、こうゆうものです」
八代達が去った頃合いを見て、男は、名刺を差し出してきた。
「ビビアン夫人のご依頼であるので、リュウ様に、本場のカレーを召し上がっていただきたくて」
男が、差し出した名刺は、のたくった文字で読めない。
「日本語、裏側よ」
「あ?」
裏返すと、在日インド商工会カビーラ・モハメッド、と、書かれてある。
そして、カビーラは、三人の部下に、何か言いつけ、
「それじゃ、私、次の仕事ありますね。ここで、失礼」
と、一礼して、出て行った。
「なんで、商工会の野郎が、刺客倒せるんだ?」
「あの人、自国では、キックボクサーだったらしいっすよ」
成程な、さすがはキックボクサー。っていうか、虎、お前?!
「えっ、カレーの仕込み?此処で?」
虎は、残ったターバンの男達と、スマホを見せあっていた。
「虎!なんで、そいつらと、会話できてんだ?」
「スマホの、翻訳機能使ってんですけど?」
なるほど、スマホてーのは、使い込めば、飴色に輝くって訳か。
ターバンの一人が、自分のスマホを俺に差し出した。
「リュウさーん、元気?ビビアンでーす!」
画面には、ゴージャスとしか、形容できないビビアンの姿が写し出されていた。
フィリピン人になり、インドの大富豪と、結婚して、幸せにやってる。本場のカレーをご馳走したいから、コックを送る。との事だった。
「虎よ、普通、札束だろ」
「ですよね」
俺と虎が、顔を見合わせている間、コック達は、機材を運び込み、調理の準備に励んでいた。
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