お願い

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お願い

日曜の昼下がりのリビングで、長女の(りょう)はファッション雑誌を読みながら、次女の(すみれ)はSNSで外国のかわいいスィーツをチェックしている。 バタバタ、キー、バタン 走る足音に続く扉の開け締めの音。 二人が顔をあげるとそこには三女の(はるか)。 「ちょっとうるさいよ」 注意する二人に向けて 「涼さま、菫さまにお願いがあります〜一生のお願い。」 と両手を合わせ、お願いのポーズを取る遥。 「こないだも聞いたよ、一生のお願い」 「今年入ってから3回目じゃない?」 涼も菫も苦笑する。 高3、高1、中2の三姉妹、そんなに年は離れてないのに、なぜか中2の遥のお願いはなぜか聞いてしまう。末っ子ならではの甘え上手なのだ。 「来月のはじめの日曜に理沙とその彼氏の裕二くんとあと裕二くんの仲良しの健くんと四人でドリームランドにいくの!」 理沙は小学校からの親友、裕二と健は中学に入ってから知り合った。理沙が裕二と付き合い出したのはまだ先月のことで、はじめてのデートでドリームランドに行くのに、ドキドキするからとお互いの親友を誘ったのだ。 遥にとっては健は初恋の人。これはチャンスとこの機会を逃さないため、姉二人に頼み事をしようとしていたのだ。 「それで、何をしてほしいの?」 「まず、涼にはメイクというか、可愛く見えるようにしてほしい。菫には四人分のお弁当を…」 涼と菫は顔を見合わせて、頷く。 涼はもともとメイクやオシャレ大好きだし、菫は料理上手だ。 かわいい妹のため、協力は惜しまない主義だ。 「わかった、協力する。ただし…一ヶ月間、お風呂掃除と朝ごはんの準備の当番を引き受けること。」 涼が早口で言うと、遥は喜んで 「涼お姉さま、菫お姉さま、大好き」と目をハートにして二人にハグ。 母親がいない家庭で大部分の家事を請負う姉二人。たまには遥に任せるのもいいだろう。 その分、ダブルデートは協力を惜しまない。
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