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夏の夜は短い。
「お疲れー」
「お疲れ様」
「今日もいい日差しだったね」
そんな夜に始まる、夏の宴。
「こっちこっち! 蜜運んで〜」
「私もお替わり!」
ざわざわと揺れる黄色い花弁の間を、給仕係のミツバチが行ったり来たりする。
「今日も大盛況だったよね」
「うんうん、私、何回も写真に撮られちゃったよ。SNSで私の写真がバズったりして」
「えーそれなら、私今日モデルみたいな子と写真撮ったから、私の方がバズるわよ」
中心に集まった小さな茶色い花の集合体を甘い蜜でつやつやと輝かせながら、夏の花たちは夜を楽しむ。
「それにしても、今年は毎日暑いよね」
「ねー。さすがの私たちでも参っちゃう」
「でもその分、この蜜も美味しく感じるってもんよ」
わかるわかる、と周りの仲間が同意する。
「これがなけりゃ、やってられないよ」
「は〜、お天道様が昇ったら、また笑顔でポージングかあ」
「とか言いつつ、ノリノリなくせに」
わはは、と笑いが起こる。星が綺麗に見える晴れた夜は、夏の花たちも饒舌だ。仲間と肩を組んで歌い始める者もいる。
そんな時間を数時間過ごすのが、彼女たちの日課だ。やがて、うっすらと東の空が白くなり始める。
「あーあ、もうこんな時間か」
「そうね。お開きにしましょうか」
「おやすみなさい」
「また日が昇ったらね」
挨拶もそこそこに、彼女たちは束の間の休息に入る。彼女たちの間を忙しなく飛び回っていたミツバチも、ほっと一息をついて、散り散りに巣へと戻っていく。
彼女たちと入れ違いのように、朝顔たちが目を覚ます。そして朝顔たちが眠る頃、夏の花たちは目を覚ます。
今日も快晴。きっと彼女たちを見に来る人は多い。そんな人たちを楽しませるために、今日も彼女たちは笑顔を振りまくのだ。
夏の夜は短い。これはそんな夜の、ひまわりたちの宴のお話――。
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