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夏祭り
いつもは静かな小さな神社が今日はとても多くの人で賑わっている。
笛や太鼓の音が夏祭りに来たのだと教えてくれるようだった。
年に一度の地域の夏祭りは小さな子供からお年寄りまで幅広い層の人が集まっていた。
スマホの画面でもう一度髪型を確認して身だしなみを整える。
初めて髪の毛をセットしたので自信がなくて周りの目線が気になって仕方がない。
少しでも「かっこいい」って思って貰えれば良いけれど。
少し薄暗くなって午後六時を知らせる鐘が鳴る。
待ち合わせの時間を過ぎてもあの子は来なかった。
「もしかして来ないんじゃね」
俺が帰ろうと思ってそうつぶやいた時だった。
少し甘くていい香りがして誰かが俺の肩をトントンとした。
「ごめんなさい、遅れちゃって。浴衣着るのに手間取ってしまったの」
息をハアハアしながらその子はニコッと笑っていた。
思わず俺はニヤけそうになるのをグッと我慢したが、心臓がバクバク言っていて聞こえてしまいそうだ。
彼女の名前は花蓮、クラスでも人気のある女子で夏祭りを誘うのにとてつもない勇気を振り絞った。
今でもよく誘えたと思うし、嬉しくて泣きそうなくらいだ。
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