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通りをゆく。
割増表示のタクシーの他、道行くものは少ない。時折走り抜ける自動車の他、響く音は少ない。
歩いていると、街灯はさほど目立たぬことに気づく。不思議なことに、暗い夜に白い光は淡いようだ。
対して、信号は目に付く。緑、黄、赤。有色光は、遠くからでもよく届いた。
存外に明るかったのは、地下道である。
歩行者自転車用の、線路下を潜るためのそれは、それこそまるで白昼のように輝きに満ちている。きっと活字本でも新聞記事でも不自由なく読めるほどだろう。
途中、道を変えて商店街に入った。
当然だが、大半の店は閉まっている。
ぽつぽつと光が灯っているのは、酒だの女だのの店のみ。特に、赤提灯はよく目立った。いつ頃から店先に掲げるようになったからは知らないが、昔の者は赤がよく見えることを知っていたのかもしれぬ。
朝方昼頃夕刻とはてんで異なる風景を、ぽつぽつと歩いてゆく。
大型スーパーを始めとした様々な施設が入る複合施設は、今は四角の黒い塊である。
階を数えるのも面倒な高層マンションは、今はそびえたつ黒い墓標である。
ゆきゆきて、途中にあった歩道橋を気まぐれに登ってみる。
眼下を伸びる通りを眺めみると、並ぶ街灯はオレンジである。光としては白より暗く、しかし灯りとしては白より明るい。実に不思議なものである。
ふと脇を見ると、白い靄が歩道橋の柵にもたれていた。
色影が薄い。夜の光さえ、靄にとってはきっと眩しいのだろう。
もう少し夜らしい、より暗く静かな場所へ行くとしよう。
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