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「瑚珠!ぼーっとしてないで皿出せ!」
「登ちゃん!大丈夫なの!?」
「絶好調だよ。誰だ朝から卵十個も食うの!」
「私でーす」
登は雑な卵料理を乱暴に大皿に移した。
どうやら登はいつもと変わらなかった。
瑚珠は少々はしゃいでいるように見える。
その様子をじっと見ていた咲は、あることに気づいて登に声をかけた。
「登、そこの麦茶ポット取っておくれ」
「ん?ああ、ばあちゃん、ほい!」
「その左腕、何ともないかい?」
「腕?何が?」
咲は、登の左腕をぐっと握った。
「昨日倒れた時にひどくぶつけたんじゃないかい?」
登は首を大きくひねって左腕に目を落とした。
青黒く濃いあざが広がっている。
「いや、気づきもしなかったなあ。昨日のはちょっと強烈だったから。もう全然痛くない」
「登、茶化さないで聞くんだよ。それが痛まないはずはない。我慢することはない。けれども、本当に我慢していないとしたら、そっちの方が深刻なんだよ。痛覚自体が薄れていると思った方がいい。いいかい、それは命に関わる病気や怪我をしても気づかないということなんだ」
咲の言葉に瑚珠が泣きそうな顔になった。
「二人とも心配しなくていい。気をつけるから」
登の声は何もかもわかっているように穏やかで、それがかえって瑚珠を不安にさせた。
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