3人が本棚に入れています
本棚に追加
バイトで
東京の大学に入学し、すぐに見つけた雑居ビルの中にある、居酒屋の厨房でアルバイトを始めた小夜。
基本、女子はお運びに回されるが、料理が好きなのとなるべく喋らなくて済む仕事を希望した。
東北訛りがどうしても気になって、極力おしゃべりはしない様にする。
だから大学でも、なかなか友達も出来なくて、せっかく東京に来たのに、いつも一人でアパートの周りを散歩するくらい。
地下鉄もよく分からないし、スマホで調べていけば良いんだろけど、そこまでして行きたい場所もなかった。
雄介とは、バイト先で知り合った。
居酒屋にいつも来る、酒屋でバイトしていた彼。
勝手口で会うと、ニカっと笑って逞しく焼けた腕でビールケースを運ぶ雄介。
バイト仲間で海に行く話が持ち上がり、誘われた小夜。迷っていた時、たまたま雄介が配達で来た。
他の仲間が「雄介くんってさ、サーフィンやるんだよね?」
「はい!めちゃ好きです」
(通りで真っ黒なんだ)と小夜は思った。
「小夜ちゃんも誘ってるんだけど、雄介くんも行かない?海」
「え?俺っすか?行きます!行きます!たまには大勢もいいかも」
「よし、決まり!小夜ちゃんも行こう」
有無を言わさない雰囲気に、断れず。
その時がきっかけで、小夜は雄介と
遊び仲間になった。
そのうち、配達で会うたび言葉を交わす様になる。
雄介はビールケースを置きながら
「小夜ちゃんさ、今度二人で出かけない?」
「え?」
「いつもみんなと楽しんだけど、俺もっと小夜ちゃんと話がしたい」
「私でいいんですか?」
「小夜ちゃんが、いいんだよ」
最初のコメントを投稿しよう!