バイトで

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バイトで

東京の大学に入学し、すぐに見つけた雑居ビルの中にある、居酒屋の厨房でアルバイトを始めた小夜。 基本、女子はお運びに回されるが、料理が好きなのとなるべく喋らなくて済む仕事を希望した。 東北訛りがどうしても気になって、極力おしゃべりはしない様にする。 だから大学でも、なかなか友達も出来なくて、せっかく東京に来たのに、いつも一人でアパートの周りを散歩するくらい。 地下鉄もよく分からないし、スマホで調べていけば良いんだろけど、そこまでして行きたい場所もなかった。 雄介とは、バイト先で知り合った。 居酒屋にいつも来る、酒屋でバイトしていた彼。 勝手口で会うと、ニカっと笑って逞しく焼けた腕でビールケースを運ぶ雄介。 バイト仲間で海に行く話が持ち上がり、誘われた小夜。迷っていた時、たまたま雄介が配達で来た。 他の仲間が「雄介くんってさ、サーフィンやるんだよね?」 「はい!めちゃ好きです」 (通りで真っ黒なんだ)と小夜は思った。 「小夜ちゃんも誘ってるんだけど、雄介くんも行かない?海」 「え?俺っすか?行きます!行きます!たまには大勢もいいかも」 「よし、決まり!小夜ちゃんも行こう」 有無を言わさない雰囲気に、断れず。 その時がきっかけで、小夜は雄介と 遊び仲間になった。 そのうち、配達で会うたび言葉を交わす様になる。 雄介はビールケースを置きながら 「小夜ちゃんさ、今度二人で出かけない?」 「え?」 「いつもみんなと楽しんだけど、俺もっと小夜ちゃんと話がしたい」 「私でいいんですか?」 「小夜ちゃんが、いいんだよ」
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