麦の音

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 季節は巡り、再び陽射しは濃くなった。陽炎(かげろう)燃ゆるアスファルト。汗が(うなじ)を伝っていく。俺の海通いは続いている。  チリンチリン。  今日も朝から鳴った麦の音。そんな音を一度(ひとたび)耳にすれば、俺はベッドから飛び起きる。 「麦っ」  この音は通り行く他者のベルか、それか今の今まで見ていた夢にまつわる空耳か。  それとも、麦か。  俺はそれを確かめたくて、ベッド傍の窓に手をかける。  大地おはよー!  四角い枠の中、入道雲の様なお団子ヘアのべっぴんさん。彼女がすぐそこにいるかもしれないと思えば、胸は高鳴る。  帰って来れる確率は20パーセント。  私は残り僅かな方を信じてたよ。  大地は私と可能性、どっちを信じるの?  そりゃ勿論、俺は麦を信じるさ。 「麦っ!」  勢いよく開けた窓の先、視界に飛び込むのは夏の眩しい朝陽と── 「麦っ……」  綺麗な入道雲だった。
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