麦の音

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「だってそんなの、80に決まってんじゃんか」  好きな人にビビりだとは思われたくないから、俺が(さら)う砂の量は変わらない。 「80パーセントの確率で雨が降りますって言われたら傘を持って行くけど、20パーセントだったら持って行かない」  枝は先ほどよりも傾いて、こんにちはと礼儀正しく、お辞儀をされている気分になる。 「よし、麦の番っ」  勝利を確信した俺は、鼻歌混じりにターンを返す。むむっと眉間に皺を寄せ、四方からお辞儀枝を見つめる麦。 「今この枝、どんな気持ちなんだろ」 「早く砂のベッドで寝てえ〜、じゃね?」 「倒れたくなーい、かもよ」 「あははっ。麦ちゃん助けてーって?」 「そうそう」 「あはははっ」  ()()り大袈裟に笑ってしまえば、それは「ちょっと大地、大地を揺らさないで」とかいうギャグじみた言葉で戒められた。  神妙な面持ちで、麦は砂山に臨む。 「じゃあさ、もし私が20パーセント側だったら?大地は80パーセントと私の、どっちを信じてくれる?」  絶対こっちが勝つだろう。そう(たか)(くく)っていた俺にスパアンと真っ向から放たれた矢。それは身体のど真ん中を射ると、俺から一時(いっとき)呼吸を奪った。
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