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「う、嘘だろ……」
「こんにちは」から、「誠に申し訳ございませんでした」の角度に変更された枝は、砂に額を付けそうになりながらもその身を持ち堪える。
四ターン目、俺の番。二度と巡っては来ないだろうと思っていた順番がまわってきた。いつの間にやら人影も消滅した暗い海辺。遠くに見える群衆が、わいわいとその時を待っている。
「ちょ、ちょっと麦、ちゃんと掬った?」
「掬ったよ。だから今、棒がヤバめの斜めなんじゃん」
「ヤバめの斜めって……」
「いいから早くっ。花火始まる前には決着つけよっ」
どう足掻いても負け、俺の敗北。べつに山崩しにおいて特別な感情やプライドがあるわけではないが、なんか癪だ。
「せーの、せーでっ!」
だから俺は不貞腐れた幼子みたく、勝負を投げ出し、豪快に砂を抉って枝を倒す。「誠に申し訳ございませんでした」からバタンキュー状態になったその枝は、麦が拾って海に投げた。暗がりの中、その行方を目で追うのは難しかった。
「大地は99パーセント俺が勝つって、思ってたんでしょう。でも私は残り僅かな方を信じてたよ」
誇らしげにそう言われ、俺は身の置き場に困る。
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