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大地は私と可能性、どっちを信じるの?
夏の始まりに言われた、彼女の言葉を思い出す。麦と可能性。それは計りにかけるものではないと思うけれど、彼女はそのふたつを皿に乗せた。
「なにそれ、80よりも明らかに少ない20の数字を信じろって言ってんの?」
麗かに流れるレゲエミュージック。この花火大会の特徴は、曲調に合わせた花火を打ち上げること。会場から朧げに聞こえてきたウクレレのサウンドは、そろそろ夜空に花が開く知らせ。陽がすっかり沈んだ海は輝きを失い、この世の全てを飲み込んでしまうブラックホールにも似ていた。
麦曰く、アメリカ産の夜の風が、ふたりの間を駆け抜ける。多くの蝉が、愛していると叫んでいる。切なさを滲ませた麦と視線が交われば、その世界の全てが時を止めた。
「私、明日アメリカに行くの。帰って来れる確率は20パーセント」
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