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「はいはいはいっ。それじゃあ行こっかっ」
だいぶ真剣な口調で注意したつもりだったけれど、麦はしれっと受け流す。
「またコンビニ寄ってくー?今度は炭酸水じゃなくて、自転車のカゴで揺れても平気なやつにしなよ」
欠陥品。その言葉が本気だったのか冗談だったのか、場の空気が元に戻った今、確認するつもりはないけれど、次にもしまた麦が口にしたら、今度は本気で怒ろうと思う。
お前が欠陥品なわけないじゃないか、いい加減にしろ、もう二度とそんなこと言うんじゃねえ、って。
ベッドの上、うーんと伸びた俺は、その腕を二回まわして覚醒の準備。そんな俺の様子を四角い枠の中から朗らかに眺めてくる麦は、相も変わらずお団子ヘアで、青空に映える入道雲の絵画に思えた。と、いうのは嘘で本音はこれ。
どこのモデルさんかと思うほど、今日も綺麗だよ。
「ちょっと準備するから、窓閉めるよ」
「はーい」
「自転車、鍵ささったまんまだから、玄関先まで出しておいて」
「はーい」
窓を閉め、パジャマと然程変わらぬ服を身に纏う。顔を洗い、歯を磨き、ビーチサンダルへ足を差し込む。今日もここまでの所要時間は五分くらいだけれど。
「お待たせ」
「おっそーい」
やはり遅いと言われてしまうのだから、俺はどうやらまだまだだ。
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