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「要さん」
言葉にするその名は、孤独を埋める呪文だったはずなのに。
「何だか、遠い人になっちゃったみたい」
あまりに大きな財力の差を見せつけられ、宇実は凹んだ。
そこに、バスルームのサッシが開いた。
「宇実は長風呂だね」
「か、要さん!?」
そこには、素裸の要が立っていた。
いや、立っているだけではなく、どんどん中へ入ってくる!
「待ちきれなくて、来ちゃった」
鼻歌を歌いながら、シャワーを使う要。
目のやり場に困り、宇実はバスタブ近くの窓の外を眺めた。
日が、長くなってきている。
春の夕日は、赤く大きかった。
やがて要が洗髪まで済ませて、バスタブに身を沈めて来た。
「せ、狭いよね。僕、もう上がるから!」
「大丈夫だよ。一緒に100まで数えよう」
ね、と微笑む要は、両手を合わせて湯を宇実に向かって飛ばした。
広いバスタブは、二人が浸かっても充分だ。
要の笑顔に、宇実もつられて微笑んだ。
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