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主任、つかぬ事をお伺いますが
ああ、「愛してる」の事かい?
…そうです。あの発言は、いったいどういう意味ですか?
キャロりんさぁ…時々おかしな事を聞くよねェ。そのままの意味に決まってるじゃないか。
主任は屈託なくそう言った。だからこそ、私には理解できなかった。
そのままの意味とは?
なるほどー、そうかそうか。じゃぁ例えるなら、”子を想う親の気持ち”ってとこかなー??
いわゆる、親心でしょうか?
あー!そうそう!ソレソレ、それだよキャロりん!さっすがぁ!
…
なんていうのかなー??補助輪外したての自転車をこぎ始めた子供みたいな、あの不安定な感じ。ニンゲンってやつはさぁ、俺らにとってそういう存在なワケ!
私には、主任の言っている事が半分は理解できて、半分はよくわからなかった。人間という存在が不安定なのは、そんな表現を使わなくても明白に分かる事実。しかし、それを”愛おしく想う”ということが、私にはわからない。
キャロル・ドーリー
両親は彼女が産まれて間もない頃、戦火による災害によって死亡。
我が子、そして、同僚達を逃がす為に、限界まで災害地にて避難誘導を行った末、一酸化炭素中毒によって倒れそのまま息を引き取る。
生前は優秀なエンジニアであり、発掘されたACの機体調整には欠かせない主要スタッフであった。
この事実を聞かされたのは、彼女が15を過ぎた辺りだ。両親だと思っていた男女は赤の他人であり、周りの人間が彼女にやたら親切なのは、彼女の過去を慮っての事。それら全てを理解した彼女は、その日のうちに、今までの全てを拒絶した。
キャロル・ドーリーは愛を知っている。しかしだからこそ、もうそれを知ろうとはしない。
いずれ無くなってしまうのなら、最初から無くていいじゃないか。
彼女は無意識のうちに、そう思うようになってしまった。
なってしまったのだ。
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