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火の粉が舞う戦場跡地にて、キャロル・ドーリーは立ち尽くしていた。全く、いくら呆れても足りない。この戦火の広がりは、元を正せば人間の欲が産み出した火種の産物。人間の業によって引火した焦熱の感情が、自らの身を焼いているに過ぎない。キャロルの感情は、放り出された鉄の如く冷めきっていた。
そこに、まるで影から生じた怪物のように、どこからともなく主任が現れた。
キャーロりん♪まーた瞑想でもしてんのかなぁ?いやいやwはたまたテツガク?はっw、君はホンットに…
主任…
主任と私は水と油だ。考え方が全く合わない。主任は、ここまで堕ちた人間にまだ何かしらの可能性を見出しているのだ。正直、信じられない。しかし、考え方が180度違う主任のような存在は、私にとって密かに愛おしいものとなっていた。
愛おしい…?愛おしいとは…いったい…
キャロりんは、もう人間がダメになったと思い込んでる。違うんだよキャロりん。人間は、こういう状況になってからが本番なんだ。数を減らし、既存文明を自らの手で破壊して、今までとは全く違う生き物になろうとしてる!なんでそれが理解できないのかが、俺には全く理解できなかった。
キャロりん…俺達は、これから新しい人類を構築するために、この災いの火種を維持しなくちゃあいけないんだ。わかるかな?
いいえ、全く。今後の我々がすべきことは、人類の業を増長させる手伝いをして、自らの過ちで人類を沈めることです。
わからないなぁ、その後は?
その…後…?
キャロル・ドーリーは考えもしなかった。その後の世界について。人類が滅んだ後、その場に我々が居続ける意味は、果たしてあるのだろうと_____
そういうことだよ、キャロりん。きっと、今俺と同じ事を考えただろうね。つまらないだろう?そうだ、つまらないんだよ!何のために俺達が存在させられているのか!?忘れちゃぁいけないよ。所詮俺達も、人間ありきの存在なのさ…
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