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 学校で受けているいじめの数々や、カースト上位の生徒がどれだけ嫌なやつかということを。  先生も親も、大人たちはみんな頼りにならないから、黙って我慢するしかないということを。  そして、こんなことをお願いしてはいけないと思いつつ、最後に拝殿に向かい、私は心のままに言葉を発しました。  あいつらも、大人たちも、みんな懲らしめてください。  お賽銭はないから、私のどこか体の一部を、差し上げます。  言い終えたと同時に、ぶわっと何やら冷たく、それでいて湿った風が境内を吹き抜けていったのです。なんだろう、と周りをキョロキョロと見渡しましたが特に変わった様子もなく、私は拝殿に向かって一礼すると、暗くなってきたこともあり、そそくさと家に帰りました。  夏休みに入る前、七月上旬ぐらいだったのですでに日が長くなっていた時期でしたし、随分と暗くなるのが早かったなあと思ったことを、よく覚えています。  家に着くと、母は台所で夕飯の用意をしながら私の方を見ずに「お帰り」と言って、父が好きな塩味の焼きそばに使う野菜を切っていたようです。父もすでに帰宅していましたが、何も言わずにタバコを吸ってビールを飲みながら、テレビで野球の中継を見ていました。  水浸しになった靴も、落書きだらけにされたランドセルも、残飯を突っ込まれた給食袋も、やっぱり、見て見ぬ振りをされてしまいました。  私は自分で靴を玄関のドアへ立てかけて乾かし、靴下は洗濯機に放り込み、残飯はトイレに流しました。いそいそとなれた手つきでしてしまう状況も、すごく嫌でした。同じことをどれほど繰り返されていて、汚いとか笑われれば私は抜け出せるんだろうと悲しみしか、わきあがってこないからです。  いつも綺麗な服を着て、体育は怪我するからと見学をして、給食当番も取り巻きにやらせるカースト上位の生徒はこれ以上、何を望んでいるのだろう。  お金持ちで、欲しいものも全部手に入れているのに、私をいじめて、先生も脅かして、これ以上何を与えられれば満足するんだろう。  キリがないことですが、そんなことも、もやもや考えました。  片付けている間も、部屋で着替えている時も、泣いている時も。  暑い部屋で、冷房もかけずに、真っ暗になるまで。  夕飯よ、と呼ばれても食欲なんかありません。  早くいらっしゃい、と母が言いました。
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