真珠と琥珀

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「いやあああ!!」 真珠(まじゅ)はベッドの上で飛び起きた。 肩で激しい呼吸をするたびに、シルクの布団カバーに差してきたばかりの朝陽が跳ね返ってキラキラと輝く。 「……また、あの夢を見たの?」 隣でむくりと起き上がった琥珀(こはく)が、裸のまま真珠を抱きしめる。 その熱くて硬い腕にしがみ付くと、やっと心と呼吸が少し落ち着いてきた。 「大丈夫だよ。あの男が帰ってくることはもうないから」 低い声が真珠の首筋から直接体内に入ってくる。 その下腹部が細かく震えるようなむず痒い感覚に、真珠は身体を小さく震わせる。 「そんなのわかんないよ。今にもドアを開けて、ただいまって入ってくるかもしれない」 真珠がそういうと、琥珀はワンルームの向こう側に見えるドアを見つめ、小さく息を吐いた。 「ここはあの家じゃないよ。だから安心して」 そう言いながら頬にかかる真珠の長い髪の毛を掻き上げる。 「それにあの男が来ても今の僕たちなら絶対に大丈夫。……でしょ?」 それ以上は言わずに、琥珀が再度首筋に唇を這わせた後、熱い舌で頸動脈を嘗め上げた。 「もう少し寝よう。今日はの日だから」 琥珀の腕がまるで自身を牽制するように真珠を強く抱きしめる。 その腕の強さと肩の大きさに、真珠はまるで自分の身体が空気を抜かれたゴムボールにでもなったように感じた。 が終われば、今夜も琥珀は真珠を抱くのだろう。 昨夜よりも情熱的に。 一昨晩よりも執拗に。 恐怖も迷いも全てが抜け切った小さな体には、 虚無しか残らなかった。
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