裏切られた女

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 長年付き合った彼氏が結婚する。相手はもちろん私、ではない。友人だと思っていた女と、彼氏だと思っていた男が来月結婚するのだ。密かに付き合っていた二人は逃げることなく真正面から私に言った。  お互い本気で愛し合っている、結婚したいと考えている。  彼は頭を下げた。女は泣いている。私はそれをひどく冷めた目でじっと見つめていた。私が何も言わずに数分間黙っているとしびれを切らしたのか、あの、その、となんだかよくわからない言葉を言ってきたので。私は一言、二人を見つめながらこう言った。 「絶対に許さないから」    共通の友達は多い。その辺の友達からは全員縁を切られたらしい。それでも二人で愛を育んでいく、となんだか妙な盛り上がりを見せているようで、結婚式に友人は一人も参加しないという状況だけどそれでも挙式をすると小耳に挟んだ。今は依頼すれば友人のふりをしたなんでも屋が参加をしてくれる。いくらでもやりようがあるのだろう。  あの時以来私は感情が凍ってしまっているかのようだ。悲しみはない、不思議なことに怒りもない。前々から怪しいと思っていたしあそこまで堂々と悲劇のヒーローとヒロインを演じられては何か声をかけるのもバカバカしかった。  でも、じゃあ私はこのままみじめな思いをしてこの先歩まなければいけないのかと思うと何かひとつやってやろうという気持ちになる。あの時あの二人に言った言葉、許さない。これは正真正銘私の本心だ。  私は一生、この思いを抱えながら生きなければいけないのか……  思い付くのは結婚式を台無しにすることだった。友人代表スピーチで真相を話してやろうかとかいろいろ考えたけど、思いっきり気持ち悪いものにしてやろうと思った。そこそこ高いウェディングプランを選んでいるはずだ、教会から降りてくるときのフラワーシャワーだか紙吹雪の紙を気色悪いのにしてやろう。  もちろん結婚式に呼ばれるわけはないし式場に協力を取り付けるわけでもないので勝手に侵入して勝手に台無しにして全速力で逃げる。
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