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【 プロミス 】
一週間前、ギターの駿さんが、“ 私 ” の大学の正門前で待っていた。
「突然、ごめん。君の顔と、奏詞と同じ大学だったという事しか知らなかったから。
少し話せるかな…」
そして近くのカフェで、私は駿さんの口から信じられない話を聞いた。
「夢に奏詞が出て来てね、
『18日の夜、 “ 星屑のステージ ” で歌いたいから、付き合ってくれ』って言うんだ。
勿論、ただの夢だと思った。でも涼平も順太も同じ夢見ててさ…
これ、ただの偶然じゃないと思ったんだ」
私は息を呑み、口を手で覆う。
何故なら私も、夢に彼が出て来て言われていたのだ。
「星屑のステージに来て欲しい」…と。
私も当然、自分の願望が生み出した夢だと思っていたし、それでも夢で会えた彼に心が揺さぶられ、目覚めたら、ただ泣いていて……
駿さんは更に続ける。
「で、その “ 星屑のステージ ” って何なんだ?って調べてたみたんだよ。そしたらね、
『市民薄明と航海薄明の間の僅かな時間に起こるそのイリュージョンを背景に、ステージ上で心を込めて歌うと、たった一度、五分間だけ願った時間に戻れる』
という伝説があるんだって。
そこに本当に奏詞が戻ってくるなら一緒に演りたいし、君にも来て欲しい…
そう思ったんだ。
夏フェス、誰よりも出演を熱望してたの奏詞だったし、意欲的に準備に取り組んでたからね。
出られなかったの、すごく悔しかったと思うんだよ。
だから、歌わせてやりたい。
それと、奏詞、その “ 五分間 ” を君に会う為に使いたいんだと思う」
駿さんは真剣な眼差しで、私にそう訴えた。
私は涙が溢れて言葉にならず、何度も頷いてみせた。
「良かった。じゃ当日、待ってるね」
私は深く頷いた後、駿さんに問いかける。
「駿さん…。その…指は…もうギターは弾けるように?…」
「あぁ、うん、すっげぇリハビリ頑張った!
前のようにはまだ弾けないけど、何とかね…。
奏詞が居なくなって、ライブはもうできないけど、あいつが作ったフェスでやる予定だった数曲、デモの声と俺らの演奏で何とかCDにして遺そうな!ってメンバーで話し合って」
駿さん達の想いが胸に染みた。
想いを引き継いでくれる仲間がいて、彼はきっと幸せだ。
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