水上くんはそんな人じゃない

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水上くんはそんな人じゃない

「松崎さん、好きです! 俺と付き合ってください!!」 突然の告白。 誰だっけ、この人。 しかも、今廊下ですれ違った瞬間告られたし。 廊下にいるメンバーがざわめく。 「あなた誰?」 「あ、そうか、わかんないよな。 一のAの葉山タツシだ」 照れ臭そうに頭を掻く葉山くん。 「ごめん、わたし好きな人いるから」 好きな人とはもちろん水上くんのことだ。 葉山くんは口元を歪めた。 「いつも松崎さんと一緒にいる水上か?」 「そうだよ、わたし水上くんが好きなの。だからごめんなさい。」 「……そうなのか。でもさ!耳が聞こえないんだろ、水上。不便じゃないか!いつも松崎さんが通訳してやってんだろ、完全に下僕扱いじゃねーか、そんなやつより俺にした方がいいと思うけど!」 は? 「耳が聞こえないからって何よ。わたしは好きでやってるの。それに水上くんは人を下僕扱いしたりしない。馬鹿にしないで」 「……っ」 葉山くんは顔を真っ赤にすると踵を返した。 『どうしたの?松崎さん』 水上くんが駆け寄ってきた。 「ううん、何でもないよ」 水上くんのこと好きってバレちゃうし 黙っておこう。 それに悪口言われてたって言ったら傷つくよね 『何か僕に隠してる?』 水上くんが頬を膨らませた。 か、可愛いっ! 「と、とにかく何でもないから!ほら、もう四時間目始まっちゃうよ、行こ行こ」 わたしは水上くんの背中を押して教室に入った。         ◆◆◆◆◆◆ 「「夏祭り?」」 わたしと柚月の声が被った。 『うん、一緒に行かない?』 スケッチブックに書かれた言葉にわたしは勢いよく、頷いた。 「行くっ!!」 「あーワタシは用事あるから二人で行ってきなよ」 意味ありげに目配せする柚月。 柚月、ありがとう! 心の中で柚月を拝む。 楽しみだなぁ〜! お母さんから浴衣を借りよう。 あの花火柄のやつ。 わたしは夏祭りのことに思いを馳せた。
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