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昼、男が目を覚ますと知らない部屋にいた。 部屋を一通り見て回ろうと何故か床で寝ていた身体を起こす。 やはり何度見ても知らない部屋ではあるが、奇妙なことに、置いてある家具は明らかに自分のものだ。 1つだけなら、被ることはあるかもしれない。ただ、テーブル、イス、ソファ、カーペットの4つも揃うことは中々ない。ソファに至っては、珈琲が不味くて吹き出し、そのままシミになった形成まである。 故に、これらは自分のものである、と男は認識した。 訳の分からぬまま、酔いや風邪とは違う倦怠感を抱えながらも、ひとまず仕事に行くことにした。 男の仕事は地下闘技場の「見世物」のようなもので、屈強な団員あるいは富裕層が仕向けた元プロレスラーなどを、さして屈強ではないその身で倒すというものだ。 先の大戦からかなり経ったというのに、こんなことをやらされて気持ちがいいわけもなく。ただ、戦うしか脳のない自分のような人間は野垂れ死にたくなければこうするしかない。 かといって、野垂れ死ぬよりマシという程度の理由で、あとどれだけまともでいられるのか。もしかしたらもう、駄目なのかもしれないが。 男はそれをここのところ、毎日考えていた。 建付けの悪い扉を開け、職場への道を歩く男は、違和感を覚えた。 いつもの通り道にある店が、少し違うのだ。例えば寂れたパン屋であった店が、若い女性が利用するような、きらびやかな外装のアパレルショップになっている。 まるで夢を見ているようだ、と男はらしくもない感想を浮かべた。そのとき、後ろから肩を叩かれた。 「おい、ウィル!久しぶりだな、2週間ぶりか?」 その恰幅がよく、声の太い男は、昨日会ったはずの同僚であった。
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