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ラオも丁度昼食を摂ろうとしていたらしく、3人で外食をすることになった。とはいえ、区内は家族で食事をとる人が多いのか、あまり飲食店は多くない。ラオの案内でたどり着いた店は中華なのか和食なのか、判別はつかない。漂う香りも様々だった。
お昼時のためか繫盛しており、テーブル席は埋まっていたため、3人はテラス席―といっても外に椅子とテーブルが置かれた簡素なもの―に腰を掛けた。
「メニューは、ラーメン、パスタ、オムライスとか!色々あるよ!おすすめはハンバーガーかな!」
「メニューの幅が広い」
「飲食店が少ないとこうなるのか」
適当に料理を頼んだ後、隣のテラス席に座っていた客から声をかけられた。
「あんたら、見ない顔だね」
その女性は深い赤色の布を頭から被っているが、見え隠れする目元からは、どこか得体の知れなさを感じられた。
「あぁ、取材で来てるんだ。この街を特集したいんだが、最近この区のトップが変わっただろ、どんなヤツなんだ?」
本日何度めかの質問に、女性は突然声を荒げた。
「あのガキ!ここの当主だか何だか知らないが、随分好き勝手やってくれてる!閣下に尻尾振って寝返って、そんなに区を仕切りたいのかね!?この前だって……」
女性は困惑する3人の空気に気づいたのか、ハッとした様子で声を鎮めた。
「あぁ、すまないね、大声出しちゃって。雲蘭のことは気に入っていたからさ」
「あぁ、いや、大丈夫だ」
話しているところに、注文したパスタとオムライスとハンバーガーが目の前に置かれた。自然と会話はそこで終わり、料理に手をつける。ウィリアムは大口でオムライスを頬張った。
「あーなんか久々にまともな飯だわ」
「確かに。俺は昨日船でクッキー食べたぐらいだな」
「クッキー?いいなぁ、美味しいよね!」
クッキーの一言にラオは目を輝かせる。予想外の反応に「そ、そうか?まぁ、確かに美味しかった」とぎこちなく返事をした。
「遠足かよ」
「い、いいだろ別に。あれは意外と腹持ちが良くてだ……ッ避けろ!!!」
ヨシュアが人差し指を立てながら説明をするのを途中で切り上げ、ラオの肩を掴み自分の方へ寄せ、横へズレながら、ウィリアムを蹴り飛ばした。
直後、大きな破壊音とともに、砂埃が舞う。
周りにいた客や、店の中の客までもが悲鳴を上げて逃げ出していく。
砂埃が徐々におさまり、全貌が見えてきた。
テーブルが、椅子が、真っ二つになっている。
丁度ヨシュアとウィリアムがいた位置だ。
中からユラリと立ち上がる――渦中の人物、真柴は鋭い目をヨシュアとウィリアムに向けていた。
「この前のネズミが……こんなところで何をしている!」
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