1話

2/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
とりあえず店に入ろうぜ、聞きたいこと沢山あるんだよ! 混乱しているウィリアムに、やけに機嫌のいい同僚の男は構わず近くの喫茶店に連れて行った。 「おい、おいジャック。いい加減にしろよ、お前。俺は聞きたいことがあるんだよ!」 適当にコーヒーとオレンジジュースを頼んだ後、また男が矢継ぎ早に話そうとしたのを、少々声を張り上げて止める。 ジャックはあぁ、悪い悪い。そうだよな、話したいことあるもんなお前は!と、ニヤけていた。 何が可笑しいのかと、俺は聞きたいことがあるって言っているんだよと、苛立ちが湧いてきたが、それどころではない。 先ほどの部屋、一夜にして変わった街並み、そして昨日会ったはずのジャックが「2週間前に会った」という発言。混乱から生じる怒りを隠さずぶつけるも、ジャックは何を言っているのかと、呆けた顔をしていた。 「おまえさ、それ昨日飲み過ぎたとかじゃねぇの?……あ、まさか、メアリーちゃんとうまくいかなかったのか……?」 メアリー。聞きなれない名前に眉間を寄せた。 「誰だよ、そいつ」 「え、お前それ本気で言ってんのか?自分の彼女だろ、いくら酒飲んで記憶飛んだからって、今のはヒデェぞ。」 「お待たせしましたー。」 険悪な空気に割って入るように、気だるげな店員がドリンクを持ってきた。 適当に置かれたドリンク。ジャックは当たり前のようにコーヒーをウィリアムの方に置いた。 「おい、俺はこんな泥飲めないぞ、知ってるだろ」 「泥ってお前、この前って言ってたじゃないか」 いよいよ自分は悪い夢を見ているようだ、ウィリアムは堪らなくなり、店を飛び出した。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!