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とりあえず店に入ろうぜ、聞きたいこと沢山あるんだよ!
混乱しているウィリアムに、やけに機嫌のいい同僚の男は構わず近くの喫茶店に連れて行った。
「おい、おいジャック。いい加減にしろよ、お前。俺は聞きたいことがあるんだよ!」
適当にコーヒーとオレンジジュースを頼んだ後、また男が矢継ぎ早に話そうとしたのを、少々声を張り上げて止める。
ジャックはあぁ、悪い悪い。そうだよな、話したいことあるもんなお前は!と、ニヤけていた。
何が可笑しいのかと、俺は聞きたいことがあるって言っているんだよと、苛立ちが湧いてきたが、それどころではない。
先ほどの部屋、一夜にして変わった街並み、そして昨日会ったはずのジャックが「2週間前に会った」という発言。混乱から生じる怒りを隠さずぶつけるも、ジャックは何を言っているのかと、呆けた顔をしていた。
「おまえさ、それ昨日飲み過ぎたとかじゃねぇの?……あ、まさか、メアリーちゃんとうまくいかなかったのか……?」
メアリー。聞きなれない名前に眉間を寄せた。
「誰だよ、そいつ」
「え、お前それ本気で言ってんのか?自分の彼女だろ、いくら酒飲んで記憶飛んだからって、今のはヒデェぞ。」
「お待たせしましたー。」
険悪な空気に割って入るように、気だるげな店員がドリンクを持ってきた。
適当に置かれたドリンク。ジャックは当たり前のようにコーヒーをウィリアムの方に置いた。
「おい、俺はこんな泥飲めないぞ、知ってるだろ」
「泥ってお前、この前飲めるようになったって言ってたじゃないか」
いよいよ自分は悪い夢を見ているようだ、ウィリアムは堪らなくなり、店を飛び出した。
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