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2話
「もうお前は酒を飲むな」
本土を離れ飛行機を乗り継ぎ、現在二人は「東洋の檻」へ向かうためフェリーに乗っている。甲板で潮風に髪を揺らしながら、海を眺めていた。
1週間前、ゲロをぶち撒けられたことに対して未だ怒りの鎮まらないウィリアムに、ヨシュアはずっと目を合わせない。厚いサングラスをかけているのでわかりにくいが、なんとなく視線が合わないことをウィリアムは解っていた。
これからウィリアムは記憶の手がかりを、ヨシュアは懸賞金を目当てに、無法地帯である「東洋の檻」へ乗り込む。
危険な目に合うかもしれないのに、こんなところで揉めていても仕方がないと、ウィリアムは寛大な心で犯人を許すことにしたのだ。
「あ、あぁ。飲まない、もう飲まないさ」
ヨシュアはぎこちなく首を縦に振りながら謝罪するも、今度は口に手を当てて背を丸めた。どうやら船酔いのようだ。
「お前なぁ……はぁ、先が思いやられる……」
どうしたものかと考えながら、ふと視線を外すと、遠くに島が見えてきた。
荒れ狂う海に耐えるように、あるいは外のものを寄せ付けないような、頑丈な壁に囲まれた島。
「東洋の檻」は、もう目の前だ。
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