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3話
ウィリアムは四方八方から襲い掛かられながらも対処していく。
強くないと言っていたヨシュアも、銃の腕はあるようで、身を守る事はできていた。
「ちょこまかと逃げてんじゃねえ!」
「クソ、キリがねぇ……!」
一人一人の実力は、ウィリアムのほうが勝っている。ただ、この迷路のような街では土地勘がないとその実力差も意味がなくなるのだ。ヨシュアの話では第一区までそう遠くはないものの、中々進めず苦戦を強いられていた。
「第一区はまだ先なのか!?」
「もう少しだ!そこに入ればなんとか……マズイ、止まれウィル!」
言いかけて、ヨシュアは焦ったように声を荒げた。ウィリアムは彼に腕を捕まれ、バランスを崩してその場に倒れる。
いきなりなにをするのかと、起き上がろうとして、異変に気付く。
目の前の敵に、頭がない。
どさり、と砂埃をたてながらその体は崩れ落ちる。
「マズイ、ここはまさか……!」
「ああ、ヤベェ、リーが禁を破ったぞ!アイツが来ちまった!」
周りの視線は、その遺体ではなく、その背後に集まった。
彼女は黒髪を低い位置に両サイド、三つ編みに束ね、学生服を身に纏っている。
抜かれた刀は赤く染まり、地面に血だまりを作っていた。
「野良共、ここから先は第一区だ。区民以外は立ち入り禁止。禁を犯した者はこうなると知れ」
彼女は首のない遺体に刃を向けながら、こちらを睨めつけた。
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