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「……。」
高畑はまとめた資料を新沼に提出し、新沼は黙ってそれに目を通す。高畑の隣には成美も一緒だ。
「…これ、事故の裏は取れているのか?」
「はい、6年前の日型新聞の記事になっています。白崎遥斗君の事故に関しては比較的資料は多く、Fujitaテレビにも放送の履歴がありました。」
「父親ときさらぎの湯の2代目、和人の方は?」
「死亡については確認出来てます。ただ死因や詳しい状況については不明です。」
「…まぁ、一般人の自殺や何ともない事故まで記事しとれないか。ネットニュースに残骸が残ってるか…それくらいか?
…それで、呪いについては?」
「それは地元の人たちからの取材で。今もこの事故の足湯が改装があっても残されているので、意味があると思われますよ!」
「あとは…営業妨害とか、利権の問題もあるが…。よし!2季分、打抜きでやるぞ!地元へ取材や、足湯への接触アポイントを取れ!いいな!いやー、久しぶりにちょっとおもしろい話になりそうだ。」
「おもしろいですか?」
「…ああ、誰も調べてない事を調べるのは楽しいだろ?そこに自由な解釈を入れ込めるし。
呪いの足湯!呪われない為にはおもちゃを持って入ること!とかな。そうしたら突然そういうおもちゃが売れたりするんだよ!
100%の事実なんて要らねぇのさ。1%分の事実があれば、99%分の穴を人は埋めるんだ!楽しみだ!」
そう言って新沼は二人の前から去っていく。
しばらく新沼が居なくなって立っている二人。高畑は沈黙を破る。
「…。あのさ、成美さん。」
「なんですか?」
「国民的アニメの深夜放送って知ってる?作者死んだ日突然夜に主人公が走り抜けるだけのアニメが放映されたって。」
「有名ですが、そんな事実はありませんよ。」
「あの話さ、新沼さんが作ったって噂なんだわ。自称で。」
「何一つ事実が無いですね。」
「そ、何一つ事実じゃない。それでも、これだけ噂や人に広がってる。…あの人の言う言葉を借りるならさ、こんな根も葉も無いような嘘でも広がるんだよね。裏を返せばこんな話もどこかに1%分事実があるんだろうな。」
「何が言いたいんですか?」
「…今回の記事…どこまでが事実になるかなーって。そんだけ。」
高畑が去っていく背中を成美は見つめ、一度首を傾げた。
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