9人が本棚に入れています
本棚に追加
「では、早速。こちらの銭湯の設備。漢方薬膳の足湯を何故残したんですか?」
「…。」
紛うことなき直球に場が凍りつく。遊矢も呆気にとられてるが成美は更に話を進める。
「こちらの設備は昔からあり、改修の際には壊さなかった。聞いている取材の中にあの足湯では6年前に白崎遥斗君の溺死の事故もあり、残しているのにはそれなりの理由があると思いまして。」
「…本当にそんなこと聞きたいのか?聞いてどうする?そんなの、私の勝手じゃないか?」
「私は事実を確認しています。あの建物が残っている事実についてどのような理由があるのかと。」
遊矢は体重前の方へ移動させる。もう椅子に座っている気は無いという感じて立つ予備動作だ。
「まあ、落ち着いてください。成美も落ち着け。」
高畑は一旦場をクールダウンさせる。
「高畑さん、お時間がないとは遊矢さんが。」
「そうだ、私は暇じゃないんで。こんな取り調べのような不快な取材なら受けないという選択のが賢いと。」
「すみません。成美は少し…猪突猛進な所がありまして。」
高畑は笑顔でもう少し座ってくださいと目で頼むと、高畑の体重は少し椅子へ戻った。
「…改めて。如月遊矢さんも沢山取材を受けてきて、きらびやかに宣伝されてきたんじゃないですか?それに比べて、我々『ソウ』なんてのは小さくて宣伝効果とかも薄いのが現状です。
ですが、そういう所だから話せることもあるんですよ。ガス抜きのような感じで。
つい先日も成美はとあるホテルでの心霊スポットみたいな所の取材と事実関係を調べたら、そんな心霊現象は矛盾し起きないと突き止めました。霊体なんてのはまた形を変えて噂話になりますが、そこのオーナーはビルの改築も無事に行えました。
呪いや噂話なんて信じる人が少ない。でもそういう曰くは意外と抱えている人が多いんですよ。こういう我々みたいなのが事実関係を調べることで、オーナーであるあなたは、ああいう設備の維持などに無駄な力を使わなくて良くなる。
もちろん表の取材ではそんなの話せないですが、ここなら。私達が『独占取材』とか言っても噂話ですから。
これだけ地元に愛されて、大規模な改修が行える遊矢さんが足湯を残したのにはきっと理由があるんですよね?
そうだ!それに私が触ったときにはあんなに怒ったのですから。言いにくいことも我々なら調べることができます。なので事実をしりたいんですよ。」
高畑の説得に遊矢は深く長く息を吐いた。そして口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!