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「…うーん!」
新沼は高畑の前で資料と記事を見つめる。
「いいじゃないか!とってもいいぞ!銭湯の改修!取り残された思い!水の奥に眠る恐怖と呪い!」
「後半は新沼さんのオリジナルですね。」
高畑のセリフなど耳に入っていないようで新沼はどんどん話を広げる。
「かけ流し出ないポンプの使用!循環する恐怖!対応できるのは汚染されてない水だけ!…特に一瞬の気の緩みが地獄への快楽門!英気を養う事が必要だ!」
「何を言ってるんですか?」
「何って、ビジネスだろ。こういう不安は次のビジネスを生み出すんだ!こういうところでさらなる広告料を取るんだよ!」
「…で、次回どうします?」
「新しいネタかんがえておけ!」
「え?」
新沼の勢いに高畑は呆気に取られてしまう。
「新しい、ネタを、考えておけ!」
新沼は念を押す。
「いや、ここは次回も繋がる予定じゃ?」
「そうだ。そこはさっきみたいにいくらでも広げられる。だから次のネタを考えておけ!」
「…いや、…結構まだ不可解な話残ってるんですが…。」
高畑の言葉に新沼は人差し指を突きつける。
「俺たちは警察でも探偵でも無いんだよ。不可解だぁ?それでいいんだよ!UFOもネッシーも不可解だから盛り上がるんだよ!そこに答えなんか必要無いんだよ!」
「…。」
「お前がそいうありえない事をさも、真実のように広げる。今の時代のSNSと同じだよ!話題がバズる。波紋のように広がる!必要なのはその波紋を生み出すことだ。別に原因や波紋を広げるのは世間がやってくれる。いいな!」
新沼が去っていくと高畑は頭をかいた。納得はいかずそのまま仕事へ戻った。
「…そういえば…成美さんは…。何してんだ?」
成美の席は空白。
「もしかして…取材か?燃えだしたのか?」
記事を纏めながらスマホで連絡を入れたが、そこに返事は直ぐに無かった。
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