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高畑はため息を何度も溢しながら記事を整えていく。
「高畑!また成美を怒らせたのか?」
「えー?成美さんはいつも不機嫌ですけど?」
「お前、成美まで辞めたら困るんだからな!気をつけろよ!」
「新沼さんは俺が辞める想定はしないんですか?」
「してない。」
「えー。」
「そんなことより、『口裂け女』の纏めはいいから、次回のネタを考えてんだろうな!」
「いや、どこも取材も行けないし。」
「そこで成美だろ!昔の事件掘り下げるの得意なんだから!アイツがリアルとお前の都市伝説イズムがマッチすればいいものができるだろう!」
新沼は軽く高畑の背中を叩き去っていく。
「…全く…。…リアルと都市伝説イズムか。」
そんなぼやきをしながら仕事を進めていく。
時計の針が12時に揃うころようやく高畑は『口裂け女』の話題をまとめ終えた。その時に成美はたまたま仕事の鞄を纏めて席を立つ。
「…高畑さん。上がります?エアコン止めますよ。」
「おーう。相変わらず仕事真面目だな。」
「…20年前の事件のホテルは今度解体です。結局呪いなんてありません。」
「あー、そういうのうまくいかんかもよ。」
「言うと思いました。」
成美はそう言うと資料を高畑の席の前に。
「噂のホテルは既に一度壊して修正していました。一度事業縮小に伴い駐車場等を売ったさいに。該当の部屋もその時になくなってます。」
「へぇー、相変わらず。事実を丁寧に並べるねぇ。」
「…呪いなんてありませんよ。勘違いか、何かが本当に居たか。それを調べる。それだけです。」
「…まぁねぇ。…最近じゃ勝手に動くカーテンとかもモーターだとか、割れるグラスもドローンで糸を引いただとか。超常現象も引き起こせるし、そういうふうに言われるからなあ。」
高畑は大きく背もたれに体重をかけた。
「……高畑さんはどうしてこんな記事を書くんですか?」
「…うん?…うーん、なんでかな?」
高畑は席を立つ。
「…まあ、俺はな、成美さんみたいに真面目じゃないから気づいたらずっとここにいんのさ。」
高畑の言葉に成美は少し呆れて触れてくれるなと顔で言う。
「はいはい、怖い顔しないで。」
「怖い顔せてるんですよ!」
二人はそう言いながら事務所をあとにした。
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