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「さぁ、こちらが新しくオープンしたスーパー銭湯『如月』です!こちらは長年地元で愛されていた銭湯『きさらぎの湯』の改装したものです!
こちらは『如月』の店長であり『きさらぎの湯』の3代目にもあたる、如月遊矢さんです!」
テレビのアナウンサーの紹介で出ていく若い細い男性だ眼鏡をかけて何だか博士のようだ。
「しかし…長年続いた『きさらぎの湯』を改装するのは思い切った判断だったんじゃないですか?」
「ええ!…しかしこれからの時代の中に合わせていかないとと思いまして!」
こうして喜々と話してくインタビューの模様を横目で高畑はモニターで見る。
「良いねー、素敵な取材に立派な機材。」
呟きながらスーパー銭湯の休憩所の雑誌を確認していた。雑誌『ソウ』の『口裂け女』の記事を高畑は自分で読んでいく。
薄なって、こんな休憩所の片隅に置かれる事も減った。しばらくここを見ていても手に取ったのはやんちゃな中学生が遊びで手にしただけだ。
たくさんの客に紛れながら高畑も風呂を巡っていく。大きな浴場は畳が使われている。露天風呂もいくつもある。
新しさの中に古き良さを残していく。露天風呂の隅。何故かカラーコーンが。
「お?何だ何だ?進入禁止か?」
高畑はふざけ半分でそこに近づいていく。古い木で作られた建物なのに随分と手入れが行き届いている。扉の上には看板。
「薬膳漢方の足湯…。」
数秒高畑は建物を見つめる。
すると老人が一人建物を見つめる。
「…こいつは残したんだなぁ。」
老人はそのまま別の壺湯の方へ歩いていく。
「…残した…。…薬膳漢方の足湯か。…。新装開店の前か?」
高畑はカラーコーンを越えて扉に手を。
そして扉の奥へ。
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